社説

東日本大震災8年 福島/原発事故 自治体が再検証を

 東京電力福島第1原発事故の教訓を伝えていく上で何が必要なのか。大事なことが一つ、置き去りにされているように思えてならない。
 被災した地元がかつて、原発とどう向き合ってきたのか。事故につながる芽を見いだす機会は本当になかったのか。事故を防ぐために何ができ、何ができなかったのか。福島県をはじめ地元自治体自身による検証作業のことだ。
 県も検証に取り組まなかったわけではない。2012年10月、各部局や市町村への聞き取りなどを基に浮かび上がった課題を取りまとめた。
 ただ対象にしたのは11年3月11日から3月末までの初動対応にすぎない。「(地震と原発事故の)複合災害の想定が不十分」「要援護者の避難方法、支援体制が不十分」といった内容にとどまった。
 事故を「明らかに人災」だったと結論付けた国会の事故調査委員会の報告書も、県に関しては初動対応の怠慢さや防災計画の不備などを指摘して終わった。
 東電と安全協定を結んでいた福島県と立地町が、事故前にどう対応していたかや、事故に対する責任が多少なりともあったかどうかなどには踏み込んでいない。
 東日本大震災と原発事故の複合災害の教訓伝承を巡っては、県のアーカイブ拠点施設が第1原発立地自治体の双葉町に整備される。20年夏のオープンを目指し、工事が間もなく本格化する。
 県は震災前の暮らしや災害の実態を伝える文書、写真、映像などを集めて紹介する方針だが、単なる展示施設に終わらせてはいけないだろう。交流人口の拡大に主眼を置くような観光施設にとどまらせず、原子力を推進してきた地域の歴史まで再検証し、未曽有の人災を二度と招かないための研究を進める役割を持たせてほしい。
 現段階で約16万点に上る収集資料の具体的な展示内容も重要だ。双葉町にあった「原子力明るい未来のエネルギー」の標語が書かれたPR看板などは、地域が安全神話を疑わなかったことを如実に示す資料で展示に欠かせない。
 全国では原発の再稼働の動きが加速する。1月には経団連の中西宏明会長が「再稼働をどんどんやるべきだ」と発言した。今も県民4万人が避難を続ける被災地からは、原発事故の風化が急速に進んでいるように見えてならない。
 こうした再稼働の動きに地元自治体はどう対応できるのか。原子力規制委員会による安全性のチェックだけに任せていいかどうか。福島県などによる再検証は、今後の原発との向き合い方を探るためにも重要な作業となるはずだ。
 福島県は02年に発覚した原発トラブル隠しで東電に厳しく対峙(たいじ)した。こうした経験も含め、事故に至るまでを詳細に検証し、問題点や反省点をあぶり出してほしい。それこそが伝承すべき教訓になる。


2019年03月09日土曜日


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