社説

3社連合が新組織/信頼関係を築き直したい

 日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が保釈されて1週間余。まるで、復権に向けた反撃を遮るようなタイミングでの記者会見だった。
 日産、フランス大手ルノー、三菱自動車の3社連合が、新たな会議体の設立を発表した。関係を修復し、提携強化を図る狙いという。強い指導力で連合を率いてきたゴーン被告による「旧体制」への決別宣言と言える。
 新会議体は権限をトップに集中させず、対等な合議制で幅広い議題を協議。共同開発や部品調達などの速やかな意思決定につなげる。
 議長に就くルノーのジャンドミニク・スナール会長は会見で「日産の会長になろうとは思っていない」と後任会長職を求めない方針を示した。
 ゴーン被告失脚後の2社間の不協和音の元は、日産の会長人事だった。資本関係で圧倒的優位に立つルノーは、自社から後任を送り込むため取締役会開催を再三求め、独自の経営体制を望む日産側と対立していた。
 スナール氏は今回、「日産の新しい企業統治を尊重する」とも強調。日産側はこれを受け、会長職を当面空席にする意向だ。両社による譲歩は当然の成り行きだろう。非生産的な主導権争いを続け、時間を浪費しているわけにはいかないからだ。
 3社連合は、2018年の販売台数で約1075万台と過去最高を記録し、世界2位をどうにか守った。ただ「稼ぎ頭」の日産は北米で振るわず前年割れ。日本ではデータ改ざん問題や「ゴーンショック」で足をすくわれ、19年3月期の純利益は前期比で半減する見通しだ。ルノーの仏内での操業・雇用は、その日産の経営力に依存している。
 自動車業界は、業種を超えた世界的な企業連携や共同開発によって、かつてない再編の時代を迎えている。20年にもわたるパートナー同士が、互いの顔色をうかがっている余裕はもはやない。
 提携の在り方で残る課題はルノーが日産株の43.4%を保有する、いびつな資本関係の見直しだ。会見では踏み込まなかったが、「対等の関係」を掲げる以上、是正しなければならない。
 ルノー筆頭株主の仏政府が主導し、今年1月に経営統合を日本側に持ちかけている。いずれ再燃しかねない。日産がルノーの背後にある政治の影を意識しなければならないとすれば、独自の企業統治は不可能だ。仏政府は民間の経営に肩入れすべきではない。 ゴーン被告という絶対的な「重し」が取り払われた今、連合は相互理解と信頼を早急に築き直し、モノづくりの本質に立ち返るべきだ。
 ゴーン弁護団によると「リーダーシップを発揮できる人がおらず、日産が心配だ」とも語ったという。日産幹部は奮起し、カリスマや政府頼みでなくても目標を達成できる実力を示してほしい。


2019年03月15日金曜日


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