社説

選択的夫婦別姓/実現願う声は広がっている

 夫婦別姓を選択できない戸籍法の規定は憲法の保障する法の下の平等に反するとして、ソフトウエア開発会社の社長らが損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は先日、原告の訴えを全面的に退けた。旧来の論法から一歩も踏み出そうとしない判断に、またしてもと失望を禁じ得ない。
 判決は夫婦同姓を定める民法の規定を合憲とした2015年の最高裁判決を踏襲。法律上の姓は一つであるべきで戸籍法が別姓を認めないことには合理性があるとした。
 原告らは戸籍上は妻の姓を選択し仕事では旧姓を使用するなどしていたが、銀行・証券口座やパスポートなどで煩雑な手間とともに、株式名義変更のコストなど経済的損失を被ったと主張。しかし、判決はこうした不利益への対処は立法の問題だとした。
 戸籍法の規定では、外国人と結婚する場合は同姓か別姓かを選ぶことができるが、日本人同士では別姓にできない。これを法の不備とする原告側の主張には、司法のあり方にも一石を投じたいという意図があったが、判決は法律論に終始した。
 15年の最高裁判決では、15人の判事のうち女性3人を含む5人が違憲の反対意見だった。1996年に法制審議会(法制審)が選択的夫婦別姓導入への民法改正を答申して20年余。法制審が同時に求めた婚姻年齢の男女差撤廃や嫡出・非嫡出による相続差別、女性の再婚禁止期間短縮は既に改正されている。
 国連女性差別撤廃委員会など内外から何度も是正を求められながら先送りを繰り返してきた国会と政府に判断を委ねられるだろうか。野党が提出した議案はたなざらしにされている。
 17年に実施された内閣府調査では、選択的夫婦別姓制度の導入に向けて民法を「改正してもかまわない」とする賛成意見が42.5%。改正の必要はないとする29.3%を大きく上回り、96年から5年ごとに実施している調査で最多となった。希望する人が別姓を選ぶための制度が、なぜ実現できないのだろうか。
 原告が主張する不利益は、現状では9割が夫の姓になる既婚女性のうち、旧姓を使用する人が日々体験している事象にほかならない。そうした不都合を嫌い、あるいはそもそも自身のアイデンティティーの一つである姓を失いたくないために、やむなく事実婚を選ぶカップルが、夫婦や家族としての安定した法的地位を得られない国のままでいいのだろうか。
 原告らによる選択的夫婦別姓制度導入に賛同を求める署名は5万人を超えた。原告側は最高裁まで争う方針で、同様の訴えは各地で起こされてもいる。地方議会で別姓法制化を求める意見書の可決や請願の動きもじわじわと広がっている。社会や意識の変化に、司法や国政が鈍感でいいはずがない。


2019年04月07日日曜日


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