社説

桜田五輪相更迭/首相の任命責任が問われる

 安倍政権の看板の一つ「全閣僚が復興相」という言葉が空疎に響く。この政権の緩み、おごりは底なしだ。
 桜田義孝前五輪相が10日夜、東京都内であった自民党の高橋比奈子衆院議員(比例東北)のパーティーで「復興以上に大事なのは高橋さん」と発言し、事実上更迭された。
 桜田氏は3月にも東日本大震災の津波被害を巡り、沿岸部の国道や県道が各地で寸断されたにもかかわらず「健全に動いていたから良かった」と発言したばかりだった。
 2020年東京五輪・パラリンピックに向け「復興五輪」を主導するトップが、被災地の実情を理解しないばかりか、被災者の心情を逆なでした。17年4月に当時の今村雅弘復興相が「まだ東北で良かった」と述べ辞任に追い込まれたケースと重なる。政治家の資質に欠けると断じざるを得ず、更迭は当然だ。
 併せて問われるのは、安倍晋三首相の任命責任である。桜田氏は昨年10月の内閣改造で初入閣。自民党二階派が推す入閣待機組を「在庫一掃」で起用したのが実態だ。それでも首相は「適材適所」と強調し、桜田氏が失言を繰り返してもかばい続けた。
 道路整備を巡り「首相や副総理が言えないので私が忖度(そんたく)した」と発言した塚田一郎元国土交通副大臣を更迭した際にも、いったんは擁護した。森友、加計学園問題でも追及された「忖度疑惑」を悪びれることなく口にする塚田氏の態度は、政権のおごりそのものではなかったか。
 相次いだ更迭は、21日投開票の衆院補欠選挙への影響を最小限にとどめる判断があるが、首相が追い込まれた形で遅きに失した。身内に甘い体質が、多くの閣僚や官僚の問題発言を引き起こした土壌であることは隠しようもない。
 政権の緩みを招いたのは誰あろう首相自身なのである。最たる例が麻生太郎副総理兼財務相だ。一連の財務省不祥事に対する政治責任を不問とし、いまだ政権の中枢に据え続けるこだわりを示す。
 首相は桜田氏の前任だった鈴木俊一氏(衆院岩手2区)を再び五輪相に起用。後半国会に向け「内閣の全員が緊張感を持ち、丁寧な説明に努めたい」と強調するものの、額面通りには受け取れない。
 度重なる政権不祥事を巡っては、いっときは謙虚な姿勢を示す一方で、肝心の説明は尽くさないというパターンが繰り返されてきたからだ。
 前回の亥年(いどし)選挙は第1次安倍政権当時の07年で、閣僚の不祥事が相次ぎ支持率が急落。参院選で歴史的大敗を喫した経緯がある。今夏の参院選でも政権内で続く体たらくが、与党への逆風になることは避けられまい。
 それでも「1強」の陰で野党は多弱。不祥事があっても「数の力」で国会審議に影響はない。そう見くびるなら、おごりは改まるばかりか、でっぷりと肥大化するだけだ。


2019年04月12日金曜日


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