社説

プロ野球選手会提言/立場を超えて真剣に検討を

 日本プロ野球選手会が今季の開幕前、球界の将来に向けた「ビジョン2019」を発表した。選手会がこうした提言を発表するのは、球界再編騒動があった2004年以来だ。「労使」あるいはプロ・アマ共通のテーマも含まれ、真剣に検討すべき内容が盛り込まれている。
 提言は(1)普及・育成環境の整備(2)魅力あるプロ野球の構築(3)選手引退後の充実−が柱。選手会は(2)の具体案として「現役ドラフト」の導入を目指し、日本野球機構(NPB)に働きかけている。
 「現役ドラフト」とは耳慣れない言葉だが、チーム事情から出場機会に恵まれない選手を対象に、移籍を促す仕組み。米大リーグ(MLB)などに同様の制度があり、「ルール5ドラフト」などと言われている。
 日本の野球協約には「選抜会議」という章があり、1970年代の一時期に「トレード会議」として開催されたこともあった。移籍の活性化を図ることで、いわゆる「飼い殺し」を防ぐ目的だ。選手会のアンケートでは、現役選手の95%が導入に賛成しているという。
 現在も球団間で個別のトレードは行われており、環境が変わる中で、才能が開花した選手もいる。「現役ドラフト」は、一定の要件を満たした選手をリストアップ。他球団が欲しい選手を金銭トレードで獲得できる仕組みになりそうだ。
 提言はプロ野球の改革だけにとどまらない。(1)には「指導者ライセンスの導入」「故障防止のための育成ガイドライン策定」などが盛り込まれた。また、(3)では「プロアマ問題の解決」「球界一体となった育成普及、指導の場づくり」を挙げている。
 サッカーでは、Jリーグの経験者が高校や大学の指導者となったり、逆に大学などの指導者がプロのコーチや監督になったり、ということが珍しくない。
 野球の場合、以前に比べるとかなり緩和されたものの、現在でもプロ経験者がアマチュア、特に高校生や大学生を指導するには、ハードルが存在する。
 ライセンス制度を導入することで、専門知識を身に付けた指導者の下で、少年らが野球を学べる機会が増える。プロ経験者にとっては、セカンドキャリアの選択肢が広がっていく。一連の提言は野球界で一つの輪を描く形だ。
 日本高校野球連盟は、選手の故障防止に向けた有識者会議を設置したが、より若い年代の育成段階からの故障防止への取り組みという視点も、当然欠かせない。
 野球に関わる各団体が、競技人口の減少に強い危機感を抱いているという点では共通している。選手会の提言を踏まえ、それぞれの立場を超えて、共通の課題に正面から向き合う時期に来ているのではないか。


2019年04月20日土曜日


先頭に戻る