社説

裁判員制度10年/負担軽減にさらなる工夫を

 市民から選ばれた裁判員が一定の重大な事件の刑事裁判に参加する裁判員制度が開始から10年を迎える。職業裁判官と共に市民が裁判に参加する意義は大きいが、制度の存続のためには、裁判員の負担をより軽減するさまざまな工夫が必要だ。
 今年3月までの裁判員裁判の審理数は約1万2000件に上り、裁判員として裁判に携わった人は約9万1000人となった。数多くの裁判員裁判が各地の地方裁判所や支部でこれまで開かれ、制度自体の認知度は高まった。
 制度の意義に関して、裁判員経験者は肯定的に捉えている。15日に最高裁がまとめた総括報告書によると、裁判員経験者のアンケートで「非常によい経験と感じた」「よい経験と感じた」は、合わせて95%以上という圧倒的な数字に上っている。
 もっとも、この極端に肯定的な数字を額面通りに受け止めるのは適当ではない。こうした高い数字の背景として、調査が判決後のまだ高揚感の残る時点で行われる点が指摘されている。設問中の「よい経験」の内容に関して、具体的には聞いていない。
 深刻な問題なのは、裁判員を辞退する人が年々増えている現状だ。裁判員候補者に選ばれたものの一定の理由で辞退が認められた人の割合(辞退率)は、制度開始時の2009年の53%から、18年には67%に増えた。
 候補者は呼び出しを受けると選任手続き期日に出頭する法的な義務があるが、出席する割合(出席率)は低下傾向を示し、18年は67.5%にすぎない。辞退者の増加と出席率の低下の背景にあるのは裁判員としての負担に対する拒否感だと思われる。
 裁判員裁判の対象となるのは、殺人、強盗致傷、強制性交等致死傷など、法定刑が死刑や無期懲役を含む一定の重大事件だ。法廷で詳細な事件内容を聞いたり、証拠写真を見せられたりする心理的な負担は大きい。
 これまで裁判所側は、裁判員の選任段階で証拠調べの内容等を説明するなど、一定の対応策は取っている。検察側も遺体の写真の代わりに、イラストやコンピューター断層撮影(CT)画像、解剖医の証言などで立証する方法を用いるなどしてきた。
 適切な証拠調べとのバランスを考えつつ、市民から選ばれる不慣れな裁判員の負担軽減のために、9万人を超えた裁判員経験者のさまざまな提言を生かすべきだろう。判決後も長期にわたって心理的なケアを行う体制の充実などはその一例だ。
 被告人などの調書を重視してきた裁判から公判を重視する裁判への移行、従来の量刑からの変化など、裁判員制度の成果は表れつつある。国民に支持される刑事裁判の実現のために、問題点を常に洗い出し、丁寧に解決していく努力を続けたい。


2019年05月17日金曜日


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