社説

水素ステーション/普及へ規制緩和を進めたい

 燃料電池車(FCV)に水素を充填(じゅうてん)する定置式商用水素ステーションが3月、いわき市鹿島町に開所した。福島県内第1号で、東北では仙台市宮城野区幸町に次ぐ試み。次世代エネルギーとして有望視される水素の活用に向けた拠点が「線」につながった。
 今回のステーションは地元の根本通商が、トヨタ自動車やJXTGエネルギーなどが参画する日本水素ステーションネットワーク(東京)と共に整備した。1時間でFCV6台分の水素を充填可能。ネットワークが保有し、根本通商が運営受託する。
 先行して産業ガス大手の岩谷産業(大阪市)が2017年に開設した仙台のステーションと異なり、既設のガソリンスタンド(給油所)に併設された点が特長の一つ。建設や運営にかかるコストの削減が期待できる。
 政府は今年3月公表した水素社会実現の工程表で、現状約3000台のFCV普及台数を20年までに4万台、25年までに20万台、30年までに80万台にする目標を示した。
 一方のステーションは現状の約100カ所を20年度までに160カ所、25年度までに320カ所整備する。水素を使うFCVと供給するステーションが両輪で普及することが、水素社会実現の大前提であることは言うまでもない。
 しかし現行の消防法は給油所にガソリン車とFCVの停車場所を分けるよう規定。両スペースの間に排水溝も設けなければならないなど、広い用地の確保が必要だ。人口減少が著しい地方は、給油所そのものの廃業が相次いでいる事情も抱える。
 いわきのステーションのような併設型は新たに用地を確保しにくい都市、事業拡大に二の足を踏む地方の双方にメリットがある。国は給油所にステーションを併設しやすくし、コンビニや行政サービスと連携が図れるよう規制緩和を進めなければならない。
 福島県内では浪江町で、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託事業として再生可能エネルギーから水素を作る世界最大級の工場建設も進む。
 東芝や東北電力などが加わる「福島水素エネルギー研究フィールド」。再エネ由来の電気だけで水素が作れれば製造段階も含め二酸化炭素(CO2)を排出しない「CO2フリー」を実現できる。
 東京電力福島第1原発事故で一時全町避難した町には今なお帰還困難区域が残る。工場が立地する棚塩産業団地は原発事故後、東北電が建設を断念した浪江・小高原発の旧予定地でもある。
 20年に迫った東京五輪・パラリンピックで政府は、福島産の再生エネ由来水素をFCVや選手村のエネルギーに利用する方針だ。併せて再生の道半ばにある福島の今を正確かつ適切に海外に発信することができれば、まさに「復興五輪」となるだろう。


2019年06月24日月曜日


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