社説

韓国への輸出規制/貿易国同士泥沼化避けよ

 近所付き合いもここまでこじれると、どうやって歩み寄るか、糸口が見つからない。日韓関係の現状を例えると、こんなところだろうか。
 日本政府は韓国に対し、半導体製造に使う材料の輸出手続きを厳しくした。フッ化水素など3品目に認めてきた優遇措置を改め、4日から個別の取引ごとに許可、審査する方式にした。
 半導体製造に用いる日本製部品・材料に対する依存度は高く、審査に時間がかかれば生産ラインに影響が出るとみられる。半導体に頼る韓国経済の心臓部を直撃するのに等しい。
 今回の規制は、安全保障の観点から韓国の輸出管理に問題があると理由付けしている。他方で、元徴用工問題に対する事実上の対抗措置であることは明らかだ。
 元徴用工を巡る韓国の対応は、両国が合意した請求権協定を覆すもので、日本からの善処申し入れに応じない以上、輸出規制はやむを得まい。
 しかし、両国はアジアにおいて経済規模の大きな貿易立国である。お互いに受けるダメージは小さくなく、近隣諸国に与える影響も考慮する必要がある。困難でも外交によって解決を図り、関係修復の努力を続けてほしい。
 3品目の対日依存度をみるとフッ化水素が43.9%、レジストは91.9%、フッ化ポリイミドは93.7%に上る。半導体メモリー、有機ELパネルなどに活用されている。
 韓国政府はサムスングループなどを傘下に持つ財閥と対応を急いでいる。材料を含む部品の開発に毎年1兆ウォン(約920億円)規模を投入するという。国内の素材産業を育成し、対日依存から脱却を図ろうと次の手を打った形だ。
 専門家の中には「日本のような高品質な製品を作るまでには時間がかかる」との指摘がある。その一方で、日本企業にとっては当面の輸出減になるほか、長期的には部品・材料技術が追いつかれ、得意先を失うのではないかと懸念する声も聞かれる。
 高い知識を持つ日本人技術者の流出を含め、仁義なき国際競争にあって、かの国の経済発展にかける情報収集力、活動力は侮れない。材料供給側にいた方が得策でないのか、日本政府は長い目で損得勘定を働かせてもいい。
 韓国の外相は、米国の国務長官に輸出規制について懸念を伝えた。仲裁を働き掛けたとされるが、日韓の問題は当事者間で話し合うことで頭越し外交などすべきではない。近所付き合いに話を戻せば、英国とドイツはよく利害が対立するとはいえ、第三国に仲介など頼まないだろう。
 日本は多国間ルールに基づく自由貿易のリーダーを任じてきた。輸出規制に固執すると看板倒れと指摘されかねず、好ましいことではない。
 溝が決定的になる前に、国益重視に立って折り合える地点を見いだしてもらいたい。


2019年07月17日水曜日


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