社説

最低賃金引き上げ/今こそ地域間格差の是正を

 2019年度の地域別最低賃金の引き上げ幅が、これまで最大だった18年度の全国平均26円を上回る27円で決着した。時給の目安は901円と初めて900円を超えた。
 厚生労働相の諮問機関、中央最低賃金審議会の小委員会が決定した。今後、目安を基に各地の地方審議会が都道府県ごとに金額を決めていく。 現政権は15年、毎年3%程度の引き上げ目標を掲げた。今年の「骨太の方針」では早期の1000円達成とした。
 審議会では、働き手の待遇改善を目指す労働側と、人件費の増加が重荷になるとする経営側が対立したものの、4年連続の3%程度の大幅アップとなった。
 最低賃金は全ての働く人に適用され、パートやアルバイトを含む非正規労働者の賃金底上げにつながる。景気を支える個人消費を促す観点からも改善が求められていた。
 7月の参院選では自民、立民など主要6党全てが「時給1000円」以上を公約に掲げた。大幅なアップを提示したのは、こうした一連の動きに配慮したと言える。
 着実に底上げされる一方で、ここ数年指摘されていた地域間の賃金格差は依然として残されている。全国平均を優先する手法をひとまず置いて、地域差の是正へと真剣に取り組むべきではないか。
 諸外国では全国一律の最低賃金が一般的なのに対し、日本では労働者の所得や物価を物差しに都道府県をA〜Dの4ランクに分けている。
 Cランクの宮城は26円引き上げて824円、他の東北5県はDランクで同じく26円アップ。秋田は788円、福島798円となる。東京と神奈川(Aランク)は1000円を超え、大きな開きがある。
 最低賃金を少し上回る程度の非正規労働者は数多く、複数の仕事を掛け持ちしている人もいる。総務省の18年調査では、正社員を希望しながら機会がなく、非正規に就いている「不本意非正規」の割合は非正規全体の12%だった。
 25〜34歳が19%、35〜44歳は14%と高く、就職氷河期を含む世代が困窮しているのがうかがえる。賃金格差によって、地方から首都圏へ労働力流出が加速しないか心配だ。
 働き盛りの若者と女性が安心して働けるようになれば、消費の活発化が図られ、少子化の食い止めにつながろう。
 東京一極集中を避け、住みやすいとされる地方への定住策として、地域間格差の是正が今ほど求められる時はない。現行のランク分け方式の見直しと合わせて、新たな角度からの議論が望まれる。
 地方の中小企業にとって、引き上げは経営を圧迫し、事業や正社員の待遇に支障を来すと慎重論も根強い。
 意欲的な経営主が腰折れしないよう、政府は助成金の充実などサポートに取り組んでほしい。経済の好循環を波及させ、地方創生を推進する一助となろう。


2019年08月02日金曜日


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