社説

ラグビーW杯/伝えよう「共に前へ」の思い

 アジアで初めて開かれるラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会が、あす開幕する。五輪・パラリンピック、サッカーW杯とともに、世界三大大会とされるスポーツの祭典だ。
 ラグビーW杯は1987年以降4年に1度開催され、今大会は9回目となる。参加する20チームが4組に分かれて1次リーグを行い、上位2チームが8強として決勝トーナメントに進出する。
 桜のエンブレムを胸に付けて戦う日本代表は、初の8強入りを目指す。前回大会で、強豪の南アフリカから劇的な勝利をつかんだ興奮を思い起こす人も多いだろう。W杯に新たな歴史を刻む活躍に期待したい。
 W杯は北海道から九州まで全国12会場で、44日間の長期にわたって繰り広げられる。期間中の観客はリオデジャネイロ五輪の約1.5倍となる180万人が見込まれ、海外からの訪日客は40万〜50万人に上るという。
 大会の円滑な運営に向け、交通や宿泊、ボランティアの対応などさまざまな面から万全を期したい。また、開催地やキャンプ地で住民や観客、訪日客、選手らが国や地域を越えて交流することは貴重な財産となるだろう。
 東北では唯一、釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムが会場となる。今月25日と10月13日の2試合が組まれている。東日本大震災で被災した釜石東中と鵜住居小の跡地に新設されたスタジアムは、まさに復興の象徴と言える。
 釜石市は、1970年代から80年代にかけて日本選手権を7連覇した新日鉄釜石(現釜石シーウェイブス)の本拠地だ。人口3万4000は今回の開催地では最小規模だが、ラグビー界にとっては特別な地でもある。
 釜石は震災で傷ついて間もなく、全国からの支援を受けながらW杯開催の招致に立ち上がり、見事実現させた。震災の記憶と教訓、支援への感謝を世界に伝えると同時に、鎮魂と「共に前へ」の思いを共有したい。
 分断と対立が深刻さを増す今の時代にあって、W杯では多様性と寛容についても思いを巡らせたい。
 日本代表31人のうち、ほぼ半数の15人は海外出身の選手である。ラグビーは代表資格に国籍の要件はない。居住年数など一定の条件を満たせば資格がある。日本以外の出身国はニュージーランドやトンガ、南アフリカ、サモア、韓国、豪州と多彩だ。
 日本代表の合言葉は「ワンチーム」。さまざまな来歴を持つ選手たちが互いを尊重し合い、チームのため、勝利のために結束する。人種や国の違いを乗り越えて思いを一つにする。
 桜のジャージーを着た選手が力を合わせて戦い抜く姿はきっと、多様な文化を受け入れ、共生社会を目指すヒントにもなるに違いない。


2019年09月19日木曜日


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