社説

社会保障改革/給付と負担の均衡に配慮を

 少子高齢化に対応する指針づくりを目指す政府の「全世代型社会保障検討会議」が発足した。
 年金、医療、介護などの制度改革をうたう舞台としては、2012年の「税と社会保障の一体改革」以来となる。この時は、与野党3党が消費税増税とセットで行うことで合意した。
 来月から消費税は10%に引き上げられ、その後については安倍晋三首相が「今後10年ぐらいは上げる必要はない」と封印を示唆している。
 22年には、団塊の世代が後期高齢者になり始める。財源が制約される中で、給付の削減と利用者の自己負担増にどこまで踏み込むかが焦点となろう。
 人口減少で支え手が減っている現状は理解できる。しかし、政府の少子化対策や地方活性化策が実を結んでいないことが、制度を立ち行かなくしている点も否めない。
 負担の上積みなど痛みを求めるだけでは国民の理解は得られまい。給付と負担のバランスに配慮し、遠い将来まで展望したビジョンを示してもらいたい。
 検討会議では、老後資金2000万円問題で噴出した年金不安への対処が大きなテーマになる。70歳までとなっている年金の受け取り開始年齢を延ばし、75歳まで選べるようにする案を議論する。
 働く高齢者を増やすのを念頭に、政府は「受け取り開始年齢を遅らせるほど1カ月当たりの年金額は増える」と奨励するが、老後をどう演出するかは人それぞれである。定年延長の施策と合わせ、選択の自由を奪わない幅のある中身を求めたい。
 年金関連では、厚生年金にパート労働者を入れる適用拡大策も焦点となる。保険料は労使折半で支払うため、及び腰の経済界との調整が課題となろう。
 介護保険の関係をみると、介護サービス利用者の負担増を検討する。原則1割の自己負担について、2、3割負担の対象者を拡大する。
 介護サービスの利用計画である「ケアプラン」の作成費についても有料とする。
 自己負担を導入すれば、1人暮らしの高齢者の間で利用を控える動きが出ると予想される。老々介護や現役世代の介護離職を防ぐためにも、慎重な対応が必要だ。
 医療分野では、75歳以上の医療機関での窓口負担を原則1割から2割へ引き上げることを話し合う。高齢者の反発は必至で、調整は難航するとみられる。
 検討会議は年末までに中間報告、来年夏に最終報告をまとめるという。来年の通常国会以降の法案提出をにらんでいるようだが、抜本改革にしては審議期間が短すぎるのではないか。
 ほころびを繕うだけの小手先に終わる恐れがある。年金をはじめ、不安解消につながる徹底した議論を望みたい。


2019年09月22日日曜日


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