社説

日米貿易協定/目立つ譲歩 国民に説明を

 痛み分けと言うよりも、相手の立場をおもんばかって譲歩したと見られても仕方ないのではないか。
 日本と米国の貿易協定締結交渉が決着し、安倍晋三首相とトランプ大統領が合意文書に署名した。
 米国産農産物の関税が撤廃、削減される一方で、日本車本体と自動車部品にかかる関税はそのままとなり、関税撤廃を求めていた日本側の要求は見送られた。
 トランプ氏がちらつかせていた自動車への追加関税と数量規制については、発動しないことが確認された。日本政府は、最も恐れていたシナリオが回避されたとして、この点を交渉の成果に挙げる。
 車の数量規制などは、米国の保護主義的な姿勢を背景に、トランプ氏が高めのボールを投げてきたのであって、自由貿易を進める観点からは認められるものではない。
 日本は引きずられてストライクゾーンを合わせたように映る。近く始まる臨時国会で野党の追及は必至だろう。「ウィンウィンの合意」と言うならば、交渉の経緯について国民への説明を求めたい。
 合意によると、米国の農産物72億ドル(7800億円)分の関税を撤廃、削減する。牛肉と豚肉、小麦、乳製品の一部、ワインについては環太平洋連携協定(TPP)と同水準に引き下げる。
 農業関連では、米国産のコメ輸入増につながる無関税枠を設けないことで一致した。日本の農家への影響は遠のいたと言うが、そもそも米国の生産団体がどこまで熱心に売り込もうとしているのか、疑問符が付く。
 農業で有利な条件を得たのは、コメなどにほぼ限定される。TPP参加の11カ国に加え、米国の攻勢を受ける国内農家への支援策は待ったなしとなろう。
 焦点の一つが自動車だった。TPP合意では、車本体の関税率(2.5%)を25年かけてゼロにし、部品の8割は即時撤廃するとしていた。
 これを基に理解を求めたが受け入れられず、継続協議とされた。外国車と競争する自動車業界と製造業には厳しい結末となった。
 トランプ政権発足以来、メキシコとカナダとの北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しで為替条項をのませたり、韓国に鉄鋼の輸出量制限を受け入れさせたりと、強引な戦術を見せつけてきた。
 日本は追加関税と数量規制の回避を優先して防戦に回りつつ、来年の大統領選に向けて結果を出したいトランプ氏に配慮した点は否めないだろう。
 余り気味の米国産トウモロコシを畜産飼料として購入することも決まっている。
 歩み寄ったからといって、再び追加関税などを求めてこないとは限らない。むしろ両国首脳の関係が良好なればこそ、もっと粘ったらよかったのではないか。


2019年09月28日土曜日


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