社説

消費税増税/影響を見極め機敏な対応を

 消費税の税率が10月1日から10%に上がる。過去の例から明らかなように、消費税の引き上げは、日本経済にとって大きなリスクだ。増税による経済への影響を見極め、場合によっては軽減税率の対象を拡大するなど、機敏な対応が求められよう。
 今回の消費税増税は、政策としてちぐはぐな印象を免れない。政府自身が増税後の景気の失速を確実視し、個人消費の落ち込みを防ぐ対策を同時に実施するのは、矛盾している。景気の悪化を招いてまで、増税に踏み込む意味はどこにあるのか。
 しかも、米中の貿易戦争は覇権争いの色合いをますます強め、世界経済の下振れリスクが高まっている時期だ。英国の欧州連合(EU)離脱、緊迫する中東情勢など、懸念材料には事欠かない。増税に適したタイミングとはとても言えないだろう。
 消費税は増大する政府の財政赤字の解消を名目に導入され、財政破綻の危機が声高に叫ばれて税率が引き上げられてきた。しかし、日銀の金融緩和と国債の大量買い入れで政府の債務は事実上、減少した。その意味からも増税する説得的な理由に乏しい。
 それでも消費税率を引き上げる以上、悪影響を最小化する対策は必要だろう。ところが、軽減税率やキャッシュレス決済のポイント還元など政府が用意している対策は、問題が多い。制度そのものが複雑で分かりにくく、事業者に困惑が広がる。
 ポイント還元は9カ月間限定で、中小店、コンビニなどのフランチャイズ店、直営店などで還元率が違うなど、極めて煩雑だ。ポイントの対象となるのかどうかも消費者には分かりにくい。ポイント還元に参加しない中小店も多数に上っている。
 対策の中心である軽減税率も問題をはらむ。複数の税率が存在し、また、類似の商品でも用途によって税率が異なる場合もあり、やはり分かりにくい。増税後しばらくは販売現場で混乱を引き起こすのは必至だろう。
 2014年に消費税を5%から8%に増税し、日本経済は大きな打撃を受けた。今回も経済成長率がマイナスに転落する恐れさえ指摘されている。そうした事態を回避するためには、増税の影響を詳細に点検し、速やかに対策を講じなければならない。
 7月の参院選では、立憲民主が増税凍結、国民民主は増税反対、れいわは廃止を訴えて注目された。現在、消費税率を8%に戻す法案に野党が一致して前向きの姿勢を示しており、臨時国会に法案を提出する可能性もある。
 いったん引き上げた税率を戻すのは現実的ではないとの反論もあろうが、ほぼ一貫して引き下げられてきた法人税の例がある。消費税増税の影響が深刻化し、多方面に広がるようであれば、減税を視野に入れるのは当然だろう。


2019年09月29日日曜日


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