社説

大川小訴訟 上告棄却/学校の安全改めて検証を

 最も安全な学校にいたはずなのに、なぜ子どもたちは犠牲になったのか−。それは学校や教育委員会の事前防災に不備、誤りがあったからだ。最高裁がそう認めた。
 東日本大震災の津波で死亡・行方不明になった石巻市大川小の児童23人の19遺族が市と宮城県に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷は市と県の上告を退ける決定をした。事前防災の不備を認め、市と県に約14億3610万円の支払いを命じた二審仙台高裁判決が確定する。
 災害が起きる前の時点で適切な対応や準備をしていたのか。学校の事前防災を巡り、法的責任を認めた判決が最高裁で確定するのは初めてだ。全国の学校現場は改めて、安全管理について踏み込んだ検証が迫られよう。
 最高裁決定は重く、市と県は真摯(しんし)に受け止めなければならない。特に市側は、二審判決で指摘された誤りを深く反省する必要がある。
 また市側は、上告断念を求める遺族や市民の声に背を向け、上告を判断した。法解釈に不服があったにせよ、その責任も問われることになるだろう。
 昨年4月の二審判決は、学校側が危機管理マニュアルに津波の避難場所や経路を定めず、市教委も内容の確認や不備の是正を怠ったとして、組織的過失を認定した。マニュアルに避難場所などを定めていれば、津波を回避できたと認めている。市が作ったハザードマップについても、学校を避難場所としたのは誤りだったと指摘した。
 二審判決は、2009年4月施行の学校保健安全法に基づき、子どもの命や身体の安全確保は学校と教育委員会の根本的義務だとし、それぞれに法的な責務を示した点で意義深い。「子どもの命を守る」ことを強く要請した判決だったと言っていい。
 二審判決が出た際には、「教育現場に過度の要求をしている」という戸惑いの声も聞かれた。だが、子どもを集団で預かる学校が、極めて高度な安全配慮義務を課されるのは当然だろう。
 教育関係者は一人一人の命を預かる重い責務を自覚し、司法が求める水準と現実に乖離(かいり)があるのならば、行政はその溝を埋めるべく環境整備を急がなくてはなるまい。
 危機管理マニュアルは学校保健安全法で、全ての学校に策定が義務付けられた。大川小事故を受け、マニュアルの見直しや防災教育の充実が各地で進んでいる。
 だが、その内容が学校と地域の実情を反映しているのか、改めて検証してほしい。各学校が置かれた状況とリスクを把握し、あらゆる想定を踏まえた対策が欠かせない。
 児童74人、教職員10人が犠牲になった大川小事故が提起した問題は、決して人ごとではない。「わがこと」として受け止め、安全な学校づくりを目指したい。


2019年10月12日土曜日


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