社説

台風19号/被災者救出、支援に全力を

 堤防が決壊し、濁流が住宅街に押し寄せる。浸水した家屋に取り残された住民がヘリコプターで救助される。そんな光景に東日本大震災の津波被害が重なり、胸が痛む。
 台風19号の通過に伴う猛烈な雨の影響で、長野県の千曲川をはじめ、宮城、福島両県を流れる阿武隈川などで氾濫が相次いだ。土砂災害も各地で続出した。
 東北や関東、中部などの広範囲で、記録的な豪雨の被害が広がっている。宮城県では丸森町や大郷町で大規模な浸水被害が発生した。
 全国で死者が相次ぎ、安否が分からない人もいる。まずは人命を最優先として、国をはじめ、自衛隊や消防、自治体の関係機関は救命救助、行方不明者の捜索に全力を挙げてほしい。
 台風19号はきのう、日本の東の海上で温帯低気圧に変わったが、危険な状況は過ぎ去っていない。土砂災害や河川の氾濫、浸水などへの警戒は引き続き必要だ。
 甚大な被害を踏まえ、政府は昨年の西日本豪雨以来となる非常災害対策本部を設置した。被害の全容把握に努め、必要な措置、対策を迅速に講じてほしい。
 生活の場を奪われた人々の避難生活は長期化も予想される。被災地では医療や福祉、行政、ボランティアなどの協力や支援が欠かせない。その広がりに期待したい。
 今回の台風は、短時間に多くの降雨をもたらした。13日までの24時間降水量は最大で宮城県丸森町筆甫で588.0ミリ、福島県川内村で441.0ミリ、岩手県普代村で437.0ミリを記録するなど各地で観測史上最高となった。
 気象庁は最大級の警戒を呼び掛ける「大雨特別警報」を13都県に発表。特別警報が2013年に新設されて以来、最大の規模となった。
 特別警報は「数十年に1度」の甚大な災害が起きる危険性が高い際に発表される。それが毎年のように出る。豪雨災害はいつ、どこで起きても不思議ではない。住民は身を守るため、自らの防災力向上が求められる時代だ。
 特に台風は、温暖化によって異変を来している。日本列島周辺の海面水温が上昇した影響で、台風は勢力を弱めずに、もしくは勢力を増しながら、日本に向かってくる傾向が強くなった。
 温暖化による台風の巨大化については、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などがかねて警鐘を鳴らしてきた。台風に伴う災害は、新たな段階に入ったと言うべきだろう。
 これまでの安全が、これからの安全を保障するわけではない。台風や気象が激化する中で、従来の防災・減災の仕組みを再考する必要があるのではないか。
 地域での対策や災害情報の発信方法、被害への支援法制などを含め、いま一度見直す時期に来ている。


2019年10月14日月曜日


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