社説

臨時国会閉会へ/「桜」疑惑は深まるばかりだ

 与党は臨時国会を会期末のあす9日に閉じる構えだ。会期延長がなければ、安倍晋三首相が「桜を見る会」の問題について今国会で発言する機会は、2日にあった参院本会議が最後となる。
 野党の追及に対し、首相はこれまでの立場を繰り返すだけに終わった。自身を巡る多くの疑惑は、むしろ深まったと言えまいか。
 本会議は衆参両院の予算委員会と異なり、一問一答形式ではない。首相の説明は用意されたペーパーを一方的に読み上げただけだった。
 自民党内には「うまく逃げ切った。年が変われば雰囲気は変わる」(幹部)との観測が広がる。「1強」の傲慢(ごうまん)と見られても仕方あるまい。
 参院では野党側が規則に基づき、委員の3分の1以上で委員会開催を要求したが、与党は応じていない。説明しきれない矛盾が数多く残っているのかと勘ぐってしまう。
 首相はこれまで「国会から求められれば、説明するのが当然だ」と述べてきた。それならば、国会のルールにのっとって堂々と委員会に出席し、説明責任を果たすのが筋ではないのか。
 政府が廃棄したとする招待者名簿について、首相は「予定通り廃棄したものであり、野党議員からの資料要求とは全く無関係」と強調。名簿の電子データ復元に関しては、バックアップデータの保管期間後は不可能だと明言した。一般の感覚に照らすと、にわかには信じがたい。
 預託商法を展開し破綻した「ジャパンライフ」元会長が首相推薦枠で招待された疑惑を巡っては、招待者も推薦元も個人情報だとして「回答を控える」と繰り返す。桜を見る会自体は「これまでの運用を大いに反省し、私自身の責任で招待基準の明確化を検討する」と語った。いずれも「人ごと」の答弁に映る。
 森友、加計学園問題に象徴される「身内優遇」、公文書のずさんな管理など安倍政権の体質が今回も浮き彫りになった。政権は徐々に体力をそがれているように映るが、自民党内で「安倍1強」を批判する勢力は皆無だ。
 かつて、党内では多くの首相候補が争った。リベラル派と右派の間で「疑似政権交代」を繰り返し、政権のかじ取りを転換してきた。
 そのエネルギーを「自浄能力」と考えれば、いまの自民党は何と落ちぶれたことか。「ポスト安倍」を巡る議論の応酬があってこそ、自民党の面目躍如とならないか。
 臨時国会の延長がなければ、次の焦点は年明けの通常国会だ。問題の沈静化を狙う政府・与党に対し、野党は予算委で追及を強める姿勢を鮮明にする。主要野党の支持率は低迷したままで、次の合流ステップも鍵になる。
 いずれにせよ首相が説明を尽くすことが疑念を晴らす近道だ。逃げたり、はぐらかしたりする幕引きは許されない。


2019年12月08日日曜日


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