社説

教員の働き方改革/新制度の前提が崩れている

 公立学校の教員の働き方改革の一環として、繁忙期に1日の所定労働時間を延長する代わりに、夏休み期間に休日を増やす−。勤務時間を1年単位で調整する「変形労働時間制」が自治体の判断で導入できるようになった。
 昨年12月、臨時国会で改正教職員給与特別措置法(給特法)が成立し、早い自治体では2021年4月からの運用が見込まれる。
 この制度の導入には、教員の勤務時間の把握が前提となっている。ところが、文部科学省の勤務実態調査(19年7月時点)によると、タイムカードなどで客観的に勤務時間を把握している市区町村は47.4%と半数にも満たない実態が明らかになった。
 これでは、制度導入の前提が崩れているとしか言いようがない。勤務時間を把握できたとしても、導入すれば学期中は夜まで働くのが当然という風潮が広がりかねない。
 繁忙期がより忙しくなり、教員の過労死などを引き起こす恐れすらある。業務内容の削減、長時間労働の解消が先決で、新制度の安易な導入は避けるべきだろう。
 文科省は業務量の多い4、6、10、11月の計13週で勤務時間を週3時間延ばし、その分、夏休みの8月に休日を5日増やすという形をイメージしている。
 ただ、この制度は本来、デパートなど特定の季節や月に業務が忙しい職場での利用を想定している。繁忙期と閑散期が明確で、労働時間を正確に把握する仕組みが必要だ。通達には「恒常的な時間外労働はないことを前提とした制度」と明記している。
 しかし、学校現場では小学校で平均月59時間、中学校で81時間の残業を強いられている。過労死ラインとされる月80時間を超えて残業をする教員は小学校で約3割、中学校で約6割に上る。
 残業が恒常化している現状を踏まえれば、新制度は単に残業を時間内労働に「合法化」するだけにすぎず、長時間労働を助長しかねない。
 夏休みに休日を増やせるかどうかも疑問だ。夏休みとはいえ、現実には多くの教員が研修や部活動指導に追われている。また宮城県では既に4〜5日間の「学校閉庁日」を盆休みを挟んで設けており、休日をこれ以上増やせる状況ではないという。
 改正給特法により、残業上限を「月45時間、年360時間」以内とする文科省の指針が法的に位置付けられた。まずは、この指針の順守を徹底することが肝要だ。
 新年度からは小学校ではプログラミング教育が必修化され、高学年で英語が教科化される。教員の仕事はますます増える。
 文科省は学校に業務削減や効率化を求めるが、学校任せではとても追い付かない。業務に見合った教員の増員を含め、教員の仕事の在り方を抜本的に見直す必要がある。


2020年02月02日日曜日


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