社説

副業トラブル/冷静な判断で自己防衛を

 政府が働き方改革の一環として副業や兼業を推進する傍ら、副業などのノウハウを販売するとうたう「情報商材」に関する消費者トラブルが相次いでいる。
 副業を巡る情報商材には、自分のブログに商品宣伝を付けて売れた場合に報酬を受け取る「アフィリエイト」や、動画・写真を配信して広告収入で稼ぐ方法などがある。
 これらは「簡単に高収入を得られるノウハウ」と宣伝され、動画やDVDといった形態で販売される。実際にはさほど稼げず、購入後に追加で高額のセミナー参加やソフトウエアの契約を次々と迫られるというケースが多い。クレジット契約や借金をさせてまで高額な契約を結ばせる業者も少なくない。
 情報商材は購入するまで商品の詳細が分からないだけでなく、そもそも適正価格が存在しない。にもかかわらず「今日中に買うと安くなる」とあおられ、つい業者と連絡を取ってしまう。そこに業者のあざとさと、消費者心理の大きな落とし穴がある。
 「2019年版消費者白書」によると、情報商材を巡る18年の相談は8787件で、13年の841件から10倍以上増えた。相談者は40〜50代が多く、契約額は10万〜50万円未満が半数近くを占める。
 増加の一因には「副業ブーム」があるとみられる。政府が副業を推し進め、容認する会社は増えている。だが実際、朝から晩まで拘束されている労働者ができる副業は限られる。こうした人が時間的な制約の中で、「インターネットを活用して楽に稼げる」とうたう宣伝や商法に引っ掛かっているのが現状だろう。
 会員制交流サイト(SNS)の普及も要因として見逃せない。国民生活センターによると、SNSで「1日1通のメール送信で月50万円もうかる」と勧められた40代女性は、その方法を30万円で購入したがもうけはなく、さらに面談で「一生サポートする」と言われて120万円を支払ってしまった。この女性は返金を希望したが断られ、電話もつながらなくなったという。
 SNSの広告を眺めると、簡単な作業で大金を得られることが強調され、これらのビジネスで成功したとする「カリスマ」が広告塔として登場するケースが多い。副業ブームに乗じ、「自分も本業以外で稼ぎたい」という消費者心理を言葉巧みに突いてくる。
 市場経済において、必ずもうかる方法などあろうはずがない。情報商材の広告の内容は本当なのか、もうけたとするデータの根拠はあるのか、批判的な視線を向けて自分を守った方がいい。
 成功例だけ並べて失敗を紹介しない広告は、とりわけ疑ってかかるべきだろう。広告そのものは必ずしも違法だとはいえないため、消費者は「うさんくささ」を見抜く判断力を身に付けて内容の真偽を吟味するしかない。


2020年02月09日日曜日


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