社説

護衛艦 中東に出航/情勢に合わせ的確な対応を

 派遣の目的も、有事における対処の仕方もはっきりとしないまま、不安を残しての船出となった。
 海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」が今月上旬、中東に向けて出航した。米国とイランのにらみ合いなどで緊張の高まる海域において、先に到着したP3C哨戒機と共に情報収集活動を行う。
 派遣の法的根拠を防衛省設置法の「調査・研究」に置いている。1年に及ぶ任務の名目が、日本関係船舶の安全確保に必要な調査研究と説明されて、納得する人はそういないと思われる。
 米国のトランプ政権が主導する有志連合には参加しないものの、そうかといって米国側の意向をむげにもできず、拡大解釈して派遣に至ったというのが真意だろう。
 あいまいな根拠の下では現場が判断に迷い、急変事態に対応できないことも予想される。拙速で結論を出した割に、国会での質疑は不十分であり、慎重に進められた過去の海外派遣の事例と比べて緊張感に乏しい。
 「桜を見る会」も大事だが、今月末とみられる活動開始時の状況や途中経過をその都度報告し、審議するなど与野党は真剣に議論すべきだ。徹底したシビリアンコントロール(文民統制)の下、的確な情勢把握を求めたい。
 自衛隊の活動範囲はオマーン湾とアラビア海北部、アフリカ寄りのバベルマンデブ海峡東側の公海で、ホルムズ海峡から先のペルシャ湾は外している。
 不測の事態に遭遇した場合、自衛隊法に基づく海上警備行動に切り替える。武器を使用した正当防衛は認められるが、被害を受けた船が日本籍船のケースに限られる。
 日本の海運会社が関わる船舶の大半は外国籍船とされ、接近や呼び掛け程度に終わるのではという指摘もある。
 そうなると、近くで展開する米軍に情報を提供することになる。反米勢力からすれば、米軍と一体と見なされて攻撃を受けるリスクを高めることになりかねない。
 1月初め、イランの革命防衛隊の司令官を米軍が殺害した。報復措置としてイランは、イラクにある米軍駐留基地を攻撃した。トランプ大統領は、さらなる軍事攻撃をしないと表明し、最悪の事態は回避されている。
 しかし、イラン本国でなくても親イラン武装組織などによるミサイル攻撃の可能性は消えず、再び緊迫する場面もあり得よう。
 イランと友好関係にある日本は外交努力によって、地域の安定を保ち続ける調整役を果たせる立場にある。多くの国々もそう望んでいるが、自衛隊の派遣が水を差すのではないかと危惧する。
 どんな立ち位置で臨み、どこまで関与するのか。有事を含めて明確な指針を示すと同時に、関係国の期待に沿う貢献の形を探りたい。


2020年02月13日木曜日


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