社説

元看護助手に無罪/再審のルール整備が必要だ

 裁判をやり直す再審のルール整備が必要だろう。無実の人を救済する再審制度には、証拠開示や審理の迅速化といった課題が少なくない。制度の見直しは、喫緊の課題ではないか。
 改めてそう指摘せざるを得ない判決が出た。
 滋賀県東近江市の湖東記念病院で2003年、男性患者=当時(72)=の人工呼吸器を外し殺害したとして、殺人罪で懲役12年が確定、服役した元看護助手西山美香さん(40)の再審公判で、大津地裁はきのう、無罪の判決を言い渡した。
 西山さんの無罪が確定する見通しで、04年の逮捕から16年近くを経て冤罪(えんざい)が晴らされる。汚名を着せられ、理不尽な扱いを強いられた西山さんが失ったものは大きい。
 今回の事件では、西山さんは滋賀県警の聴取に「呼吸器のチューブを外した」と自白し逮捕、起訴された。公判で否認に転じたが、懲役12年の判決が最高裁で確定し、服役を終えた。
 判決は「患者が殺されたという事件性はない」と述べ、自白は警察から誘導されたと指摘し、信用性や任意性を否定した。事件そのものが警察の「でっち上げ」だったということになる。判決は捜査を批判する一方で、冤罪の背景には言及しなかった。
 冤罪がなぜ、生まれてしまったのか。再発防止のためには、ずさんな捜査の経緯や誤判を招いた裁判所の審理も含め、検証が求められよう。
 再審制度の在り方も問われている。刑事訴訟法は「無罪を言い渡す明らかな証拠を新たに発見した場合」に再審を開始すると定める。だが、証拠の取り扱いや、具体的な進め方の規定はない。
 とりわけ問題なのは、元の裁判に提出されなかった証拠の扱いだ。検察側証拠は有罪立証のためのものが中心だ。無罪を推定させる証拠があったとしても法廷で示されなければ、再審請求側はその存在すら知ることが難しい。
 裁判員裁判では、検察側証拠一覧を弁護側が開示請求できるが、再審請求審は対象となっておらず、開示を担保する制度はない。
 今回の再審では、無罪につながる証拠を県警が示してこなかったことが判明した。他殺ではない可能性を指摘する医師の所見が記された捜査報告書が、再審まで非開示のままだった。
 また、多くの再審請求審では、再審開始が決定されても検察が抗告を繰り返し、審理は長期化している。それでは救済が遅れるばかりだ。再審開始が決定した場合、直ちに再審が開かれるよう見直すべきではないか。
 日弁連は2018年の人権擁護大会で、状況改善のため「再審法」制定を求めるなどの決議を採択した。無辜(むこ)の人の一刻も早い救済、名誉回復に向け、政府や国会は速やかに対応してほしい。


2020年04月01日水曜日


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