社説

東北三大祭り中止/雌伏の時を経て来年こそ

 予想されていたこととはいえ、ことしの東北は寂しさもひとしおの夏となりそうだ。
 青森ねぶた祭(8月2〜7日)、秋田竿燈まつり(同3〜6日)、仙台七夕まつり(同6〜8日)の東北三大祭りがそろって中止されることが決まった。新型コロナウイルスの感染終息が見通せない中、判断の留保はさらなる混乱を招く恐れがあった。早期の決断は妥当と言えるだろう。
 このほかにも各県を代表する夏祭りが軒並み中止、または規模縮小を余儀なくされており、観光・運輸など関連業界への悪影響は避けられない。事実上の「休業」を強いられる事業者に対して、手厚い支援策が求められる。
 東北三大祭りには昨年、計641万人(前年比28万人増)の人出があった。好天に恵まれるなど好条件が重なったほか、中国系を中心とした外国人観光客の増加も追い風となった。ことしは東京五輪の開催期間中でもあり、さらなるインバウンドの拡大を見込んでいた。
 そこに冷や水を浴びせたのが国内外で猛威を振るう新型コロナウイルスだ。東京五輪は来年に延期となり、大規模イベントは大都市圏、地方圏を問わず中止が相次いでいる。近場の外出でさえ「命を守る」観点から自粛が要請され、世上のムードは観光どころではなくなっている。
 三大祭りは屋外のイベントではあるものの、いわゆる「3密」のうち「密集」「密接」に当たり、他人と距離を保つ「社会的距離」の徹底が難しいイベントだ。周辺飲食店のにぎわいを考えれば「密閉」にも該当し、感染の危険性は非常に高くなる。
 東北は今のところ首都圏ほど深刻な感染状況にはないが、祭りが呼び水となってウイルスが拡散してしまう恐れがある。政府の思惑通り「緊急事態宣言」が奏功し、大型連休明けに終息に向かうとしても第二波、第三波の襲来を予測する専門家もいる。
 「人命は何物にも代え難い」。仙台七夕まつり協賛会の鎌田宏会長(仙台商工会議所会頭)の指摘は、祭り関係者だけでなく多くの市民の共通認識でもある。中止はつらい決断だが、今は雌伏の時だ。
 既にホテルの稼働率は低下し、飲食店では閑古鳥が鳴いている。バス、タクシー、土産物など観光業界は裾野が広い。現在の苦境を夏祭りで挽回しようとしていた事業者にとっては、全く先が見通せない深刻な事態となっている。当座の運転資金の確保はもちろん、雇用維持のための融資や補償制度の整備が急務だ。
 集客の多寡ばかりに目を奪われがちな祭りイベントだが、本来は災厄を払い地域の持続可能性を確認する場でもあったはずだ。小規模でもいいから、店や町内会単位で伝統行事の意味を再認識する機会としてはどうか。ため込んだエネルギーは来夏、一気に解放しよう。


2020年04月16日木曜日


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