社説

在宅被災者/住宅支援制度の再構築急げ

 10年目に入った東日本大震災の被災地で置き去りにされていた課題が、ようやく動きだす。国は在宅被災者への対応を充実させ、住まい支援制度の再構築を急ぐべきだ。
 大規模災害で損壊した住宅に長期間住み続ける在宅被災者。総務省は3月末、仮設住宅への入居を認めるよう内閣府に勧告した。仮設入居は原則として自宅全壊のケースに限られるが、勧告通りとなれば大規模半壊以下の在宅被災者も可能になる。
 被災家屋補修に関する主な助成に(1)災害救助法に基づく応急修理制度(最大59万5000円、震災当時は52万円)(2)被災者生活再建支援制度の加算支援金(最大100万円)(3)自治体独自の支援制度−がある。だが応急修理制度を利用すると住む自宅があるとみなされ、仮設に入れない。
 総務省は在宅被災者らへの支援をテーマに2018年10月〜今年3月、東日本大震災や災害で被災した7県と22市町村などを対象に「行政評価局調査」を実施した。
 被災者が仮設入居の要件を失うと知らずに応急修理制度を使ったケースを確認。修理期間は「災害発生から1カ月以内」と定めるが、調査対象の全市町村で工事業者の不足などから期間内に完了しなかった。想定通り修理できずに長期間、劣悪な住環境に置かれた人が相当数いたという。
 制度と実態とのずれを正すため、総務省が応急修理制度と仮設入居の併用を認め、完了期間の見直しを求めたのは当然の流れと言えよう。
 震災で最大の津波被災地となった石巻市では、壊れた家屋に暮らし続ける被災者の生活難や健康問題が深刻化した。現実に沿った今回の勧告は一定の意義を持つ。
 それでも十分な救済には至らない。一例が修繕費の支給額だ。被災者生活再建支援制度で大規模半壊以上の世帯に支給されるのは、基礎支援金を合わせても最大200万円。だが支援団体の調査によれば、実際の修繕費は平均500万円で開きは大きい。
 在宅被災者は年金暮らしの高齢者が多い。資金不足を補って自宅を直せれば、被災地の共通課題である地域コミュニティーの分断を防ぐことにもつながる。支給額の拡充は一刻を争う課題だ。
 一方、総務省は被災者の個別事情に応じ生活再建策を作る「災害ケースマネジメント」の重要性を指摘した。宮城県内では在宅被災者支援に注力する仙台弁護士会や一般社団法人「チーム王冠」が法制化を求める。伴走型の支援活動として導入する自治体が相次いでおり、全国に浸透させる手だてを急ぎたい。
 内閣府は1年以内に改善状況を報告する。今後起こり得る首都直下地震や南海トラフ巨大地震で大規模避難が想定される。在宅被災者を取り巻く苦境が深まらないよう、国はスピード感を持って制度の再設計に努めてほしい。


2020年05月11日月曜日


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