社説

デジタル遺品/「終活」へ公的対応が不可欠

 死を迎えるとき、パソコンやスマートフォンに残されたデータをどうするか。こうした「デジタル遺品」の整理を考えるのが「デジタル終活」だ。
 デジタル化されたデータの相続などについては、法的整備の必要性が指摘されるが、日本では進んでいない。個人情報や金融取引情報も含まれるだけに、拡大するネット社会で円滑に終活を進める手立てが欠かせない。
 パソコンやスマホ、あるいはそこからアクセスしたネット上の空間には、さまざまな個人データが残る。写真やメール、会員制交流サイト(SNS)での書き込みなどから、オンラインでの金融取引情報などもある。持ち主が亡くなれば、これらが「デジタル遺品」となる。
 遺族にすれば、「スマホに残る写真を遺影にしたい」「SNSから、死亡を伝えるべき人を知りたい」など、「遺品」に必要な情報が残されている例が多い。
 相続を考えると、ネット銀行やネット証券の利用状況、残高を知ることも不可欠だが、多くの場合、パスワードや認証などのセキュリティーがかかっている。遺族がアクセスできなければ、内容を確認できない。
 亡くなっても金融取引が続き、相場変動で損失を抱えたり、有料サイトで会費などが引き落とされ続けたりといったトラブルもあり得る。遺族に知らせたくない情報が残されている可能性もある。
 デジタル遺品の取り扱いに関し、法的な整備が進む国もある一方、日本では「法的な規定や公的ガイドラインは未整備だ」と日本デジタル終活協会の伊勢田篤史代表理事(弁護士・公認会計士)は指摘する。
 SNSなどは追悼アカウントなどを設けている例もあるが、取り扱いは各事業者の対応次第というのが実情だという。通帳がないペーパーレスでのネット取引などは、金融機関を探すこと自体が遺族の大きな負担となる。
 ことし1月、衆議院財政金融委員会で「ネット上の相続財産を把握しやすくする方策の検討を」とする質問があったが、政府側から前向きな答弁はなかった。
 総務省の通信利用動向調査(2018年)によると、いまや国民の8割がインターネットを利用し、60代で4分の3、70代でも5割以上だ。高齢者が無縁とはいえない。また、ネット利用者の6割がSNSを使っている。
 伊勢田氏は「10年先を考えると、デジタル遺品の問題はもっと大きくなる」として、法整備を含む早急な対応の必要性を訴える。
 ネットやサイト接続に必要な情報、利用しているサービスなどを、エンディングノートに残したり、家族と話し合ったりする「デジタル終活」をそれぞれが進めていくことが、公的な位置付けを求める機運を高めるのではないか。


2020年05月23日土曜日


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