社説

成年後見制度20年/生活支援に重点を移そう

 認知症や知的障害などで判断能力が不十分な人を支援する成年後見制度が始まって20年がたった。介護保険とともに高齢社会を支える「両輪」として期待されたが、その利用は伸び悩んでいる。
 後見人が強い権限を持つことで、当事者の自由な生活が制限されるのではないかとの懸念が払拭(ふっしょく)されず、国民の間に十分な信頼感が育たなかった結果と言える。
 成年後見制度は、禁治産、準禁治産制度を廃止して2000年4月に創設された。家庭裁判所が弁護士や親族などから後見人(判断能力に応じて保佐人、補助人)を選任。判断能力が不十分な人を支援し、財産管理や福祉サービスの手続きを行う仕組みだ。
 厚生労働省などによると、認知症の人や貯蓄が乏しく家族の援助も得られない独居高齢者が増加する中、制度による支えが必要な人は数百万人に上るとみられる。
 しかし、18年末時点の利用者は約22万人。内閣府の認知度調査によると、制度の内容を知っていると答えた人は半数に届かなかった。
 利用が進まない最大の原因は、後見人の力が強く、原則として財産に関する全ての法律行為を代理できることだ。実際に、「財産が目減りするとして住宅のバリアフリー改修を拒まれた」「意に染まない施設に入所させられた」など、本人の意思を無視して物事を決められたとの苦情が少なくない。
 まずは弁護士や司法書士などの専門職に財産管理を代行させることに主眼を置いた制度からの脱却が不可欠だろう。社会的な孤立を防ぐネットワークの一員として最適な後見人を選び、その後も関係機関と連携しながら、生活支援の役割を担っていける制度への変革が求められる。
 参考にしたいのが、山形市の取り組みだ。市は13年、成年後見センターを開設。認知症や重い精神疾患があって支援が難しい高齢者らについて市の担当者と専門職、社会福祉協議会が協議しながら、後見人の選任、必要なサービスの調整などを行っている。
 いわゆる「困難事例」であっても迅速な選任が可能になるだけでなく、後見人としても関係者との連携で、健康状態や生活状況の変化に応じた対応がしやすくなる。
 山形市の取り組みにならったかのように、国は17年、利用者の相談窓口となり、関係機関との調整も担う「中核機関」の創設を決め、22年3月までに全ての自治体に設置するよう求めている。だが、多くの自治体では予算、人材の確保がネックとなり、既に設置済み(19年10月時点)なのは、山形市のほか長野県伊那市や愛知県日進市など160市区町村にすぎない。
 厚労省は団塊の世代が75歳以上になる25年には、認知症の人が最大730万人に達すると推計している。制度改革を急がなくてはなるまい。


2020年06月01日月曜日


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