社説

地上イージス停止/徹底検証と納得いく説明を

 迎撃ミサイルの一部が民家に落下するのを防ぐという基本的なところをクリアできないまま、配備計画を進めていたのか。
 かねて指摘されていた「最初から配備ありき」との疑念を強めることとなった。
 秋田県と山口県を候補地とする地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」について、河野太郎防衛相は技術上の不備を理由に配備計画を停止すると表明した。
 システム改修で膨らむコストに対し、迎撃効果が見合わないことも分かった。事実上の撤回となろう。装備品購入を望む米国に配慮し、高額な買い物をしたものの、技術的なチェックを粗雑にしていたようにも見える。
 秋田市の陸上自衛隊新屋演習場の近隣住民をはじめ、振り回された自治体の不信は消えていない。政府は幾つもの疑問に答える責任がある。導入決定から停止までのプロセスを明らかにし、関係者に謝罪するよう求めたい。
 地上イージス計画は、北朝鮮の核・ミサイル開発などへの備えとして、2017年に導入を決めた。
 日本全体をカバーできるとの立地条件から、秋田市新屋と山口県の陸自むつみ演習場(萩市、阿武町)を適地としていた。
 昨年6月、新屋を適地とした調査自体に重大な数値ミスが発覚し、地元は猛反発した。防衛省は再調査を余儀なくされ、候補地を新屋以外に広げていた。
 計画停止になったのは、むつみ演習場で発射した場合、切り離される推進装置「ブースター」を安全な場所に落下させられない不備が見つかったからという。
 同省内部では当初から、落下地点の制御は技術的に難しいとされていた。危険を知っていて受け入れを迫っていたとすれば、地方軽視、国の思い上がりも甚だしい。
 秋田など地元の反発で、地上イージスはもう無理と諦めた可能性もある。この辺も明確にしてほしい。
 配備計画にかかる費用は4500億円とされ、既に1800億円の契約を終えている。20年度当初予算では、発射装置の取得費など129億円を計上した。
 トランプ米政権誕生の前後から、政府は米国製品を買うことで良好な関係を保つのに神経を注いできた。その象徴が防衛費で、20年度の総額は5兆3000億円と過去最高を更新した。
 ステルス戦闘機の購入などにも手を広げる。地上イージスともども、「購入ありき」になっていないか。使う段になって運用する側の技能と懸け離れているのでは無駄遣いになりかねない。
 今回の事態は防衛全体の信頼性を揺るがす。この装備は本当に必要か、なぜ計画停止に追い込まれたかを徹底検証し、国民の納得を得られるまで説明すべきだ。


2020年06月17日水曜日


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