社説

コロナ禍と農業/副業先として魅力高めたい

 新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の発令中、休業を余儀なくされた人たちが副業先として農業を選んだケースが目立った。一過性の現象として捉えず、担い手不足に長らく苦しむ生産現場の光明となるような方策を考えたい。
 岩手県では緊急事態宣言が発令された4月以降、短期アルバイトの新規求職者が増えた。盛岡市と矢巾、紫波の2町を管轄する岩手中央農協(紫波町)の無料職業紹介所には4月に27人、5月に25人の応募があった。前年同月比でそれぞれ24人と8人の増加だった。60歳未満と副業希望者が多いのが特徴だという。
 新型コロナの影響で生じた損失を少しでも穴埋めしようと農業に着目した例もある。
 興行中止に追い込まれた女子プロレス団体「センダイガールズプロレスリング」(仙台市)のメンバーは、宮城県内で農作業に取り組む。「人は働きがいがあれば表情が生き生きする。青空の下で作業ができるありがたさを実感する」。里村明衣子代表の言葉が印象的だ。
 農業の生産現場は、高齢化や後継者不足といった課題に直面して久しい。農林水産省によると、農業就業人口は389万1000人(2000年)から168万1000人(19年)に激減した。この間、平均年齢は61.1歳から67.0歳に上がった。
 いわゆる売上高に相当する農業総産出額は、ピークの11兆7000億円(1984年)から9兆558億円(2018年)にまで低下した。
 そんな中で明るい兆しも見て取れる。49歳以下の新規就農者は、1万8000人(13年)から2万1000人(17年)と増加傾向にある。小規模農家が減る一方、法人化して農業に取り組む経営体が増えたため、「サラリーマン」として就農する若い世代が増えたとみられる。
 コロナ禍で副業として農業を選んだ人は働き盛りが多い。経済回復には相当な時間を要すると予想され、今後も副業のニーズは高いだろう。「2枚目の名刺」としての農業の魅力をつくりたい。
 農家の人手が必要な時期に、副業希望者をマッチングするのも一手だ。その際、本業と遜色のない賃金を提示できるかどうかが重要となる。
 岩手県内のある農協では休業した宿泊施設に農家の求人を紹介したが、マッチングには至らなかった。担当者によると、賃金は時給800円前後で同県の最低賃金並み。交通費を支給しないケースが多いと明かす。
 コロナ対策でマッチング事業を実施した弘前市は、農家に対し休業者らに支払った日当の半額を補助した。有効なお金の使い方が、これまで農業に見向きすらしなかった人を呼び込むことにつながる。国、県、市町村が一丸となって基幹産業を守る積極策を打ち立ててほしい。


2020年07月04日土曜日


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