社説

コロナ禍と要支援者/見守り態勢に盲点はないか

 感染防止を優先するあまり、死角が生じたのだろうか。
 南相馬市で5月13日、1人暮らしの60歳代男性が自室で病死しているのが見つかった。周囲が異変に気付かなかった孤独死。死後2カ月程度経過したとみられている。
 男性は東京電力福島第1原発事故で福島県浪江町から避難し、南相馬市の県営災害公営住宅で暮らしていた。
 浪江町社会福祉協議会が定期的に安否を確認してきたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2月中旬から戸別訪問を中断。発見が遅れたという。
 感染防止と周囲の見守りが必要な人の生活支援。南相馬市の例は、この二つを両立させることの難しさを見せつけた。だが、同時並行して取り組まなければならない。
 1人暮らしのうち、高齢者は全国で600万世帯を超える。2040年には896万世帯に増加し、高齢者世帯に占める割合は4割に達するとの予測もある。
 生活支援を担う民生委員らも高齢化が進み、慢性的に人手が足りない。国は現場の課題解決を先送りすることなく、人材育成をはじめ支援態勢の再編に力を入れるべきだ。
 外出自粛要請を受け、心身に深刻な影響を受けている人も増えている。例えば、デイサービスを利用できず、認知症の度合いが進んだり、家に閉じこもりがちになり、運動不足で持病が悪化したりしたケースだ。
 外出自粛中は、民生委員や地域住民らによる戸別訪問、災害公営住宅での交流イベントが中止になった。このため、周囲が体調の変化に気付かず対処が遅れることもあった。
 地域の見守り態勢を点検し、再構築に向けた取り組みに着手した自治体もある。
 湯沢市はコロナ禍の影響で外出する機会が減っている75歳以上の1人暮らし世帯を、市職員が手分けして訪問する見守り活動を6月8〜17日に行った。
 市が備蓄するマスクを1人に5枚ずつ配りながら、高齢者約1800人に体調や心配事などを尋ねた。ほぼ全職員を投入し、聞き取った内容を見守り態勢の見直しに生かす方針だ。
 定期的に高齢者宅を訪れる民間業者などに協力を仰ぐ取り組みも進めたい。電気、ガスの事業者や宅配業者、新聞販売店などと見守りの協定を結んでいる自治体は多い。こうした連携をさらに強化すべきだ。
 緊急事態の解除から1カ月以上が経過し、社会が徐々に活気を取り戻しつつある。生活支援活動も再開されたが、従来と同じ内容に戻すだけでは不十分だ。
 目配りが行き届かない盲点を作らないことが最も大切である。誰一人として孤立させてはならない。感染の第2波に備え、見守り態勢を万全にしておきたい。


2020年07月05日日曜日


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