社説

農業・農村の行方/未来志向で持続性高めよう

 ことし、農業政策の方向性を示すプランが立て続けに策定された。
 政府は3月末、「食料・農業・農村基本計画」を発表した。向こう10年間の指針で、5年ごとに見直される。
 6月には、2019年度版の「農業白書」が閣議決定された。過去最低の37%に落ち込んだ食料自給率(カロリーベース)を30年度に45%に引き上げるなど、基本計画に沿って農業基盤を立て直すことをうたっている。
 注目されるのは、規模の小さな経営や家族経営の支援を打ち出したことだ。大規模法人一本やりでなく、多様な経営スタイルで農業の衰退を食い止めるという。
 「新しいアプローチが加わった」と評価する声も聞かれる。産地を元気づけ、持続性を高められるよう、計画の肉付けを急いでほしい。
 近年の営農政策は、大規模な農業法人に土地を集約し、大型機械や技術革新による効率化を優先してきた。
 高齢化や後継者不足の進む状況では、現実的なやり方として一定の役割を果たしてきた。それでも農村の疲弊、耕作放棄は止まらず、食料の安定供給には赤信号がともったままと言える。
 新たな基本計画は中小・家族経営について、「産地単位で連携・協働し、持続的に農業生産を行っている」と高く位置付けた。
 コミュニティーの主体と捉え、「地域社会の維持でも重要な役割を果たしている」と評価した。人のつながりを生かし、家族型と大規模経営体を連携させて地域を支える。担い手育成と零細農家をどう両立させるか、大胆な支援策を期待したい。
 自治体の役割に目を向けたのも特徴とされる。農業人の悩みを聞き、国のメニューを参考に支援を考えるのは市町村の職員である。
 「平成の大合併」で職員の減少、農業に詳しい職員の配置転換が進む。自治体は人材の確保、育成に意を用いてほしい。
 環太平洋連携協定(TPP)や日米貿易協定の締結により、海外からの流入が見込まれる中で、和牛や日本酒、水産品、果物を逆に売り込む戦略も盛り込んでいる。
 アジアで広まる和食ブームをにらんでのことだが、衛生管理の難しさなどから、19年の輸出額は前年比0.6%増の9100億円と目標の1兆円に届かなかった。
 この春以降、新型コロナウイルスによる世界経済の減速で一層、厳しい局面にある。国内でも学校給食など販路が一時閉ざされた。
 コロナをきっかけに、安定供給につながる流通と食料安全保障について新たな検討も求められよう。
 戦後の食糧難、減反、対外向けの市場開放と国内農業はいばらの道だった。グローバルな時代を迎え、明確な指針で展望を描いていきたい。


2020年07月11日土曜日


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