社説

最低賃金/地域ごとに引き上げ探ろう

 本年度の最低賃金について、厚生労働省の中央審議会は「現行水準の維持が適当」とし、引き上げ額の目安を示さないとする報告をまとめた。
 新型コロナウイルスの直撃を受け、経営側は「経済情勢は厳しく、引き上げとなれば雇用情勢を悪化させる」と主張した。
 労働側は「デフレ脱却や経済の好循環に向けた歩みを止めるわけにはいかない」と待遇改善を訴えた。
 3日間に及ぶ討議の末、中立の有識者委員が経営側に沿った結論を導き、2009年度以来、11年ぶりに「目安額なし」となった。
 コロナの災厄を考えれば、引き上げは難しいのだろうが、地域によって痛手を受けた程度は微妙に違う。これから都道府県ごとの審議会で最低賃金を正式に決定する。
 日本の水準は、先進国の中でも低いとされる。個人消費を喚起し、景気を下支えするためにも、それぞれの実情に合わせて賃上げの方向を探ってほしい。
 最低賃金アップは、「成長と分配」をうたうアベノミクスの柱で、昨年度までの4年間は毎年3%のペースで上昇、現在は全国平均で時給901円となっている。
 他方で、地域間の格差は依然大きい。最高額である東京の1013円に対し、青森、岩手、山形など15県は最低額の790円にとどまる。宮城県は824円。
 物価と所得を元にしているとはいえ、最高と最低の差額が広がっているのは座視できない。格差を放置すると、若者が地方から都市部へと流出し、東京一極集中を加速させかねない。
 コロナ禍でテレワークなどデジタル技術の活用が進んだ。政府も、首都圏にいなくても仕事をこなせる仕組みづくりを始めている。
 地方創生と時代の変化に合わせ、賃金底上げの流れを太く根付かせたい。
 最低賃金に近い給与で働くのは、小売り・卸売業、宿泊・飲食サービスなど。介護福祉分野で働く人も多い。
 最低賃金は、スーパー、コンビニなどで働くパートやアルバイトなど非正規労働者にも適用される。これらの職種は、人々の暮らしを支える「エッセンシャル・ワーカー」と呼ばれる。
 処遇の改善を図ることで仕事の重要性が知られ、やりがいや職場の定着につながれば、経済の好循環になろう。
 そのためには、経営者と働き手にプラスとなる環境を整える必要がある。
 賃金を上げると、人件費の増加によって解雇、雇い止めを招くのではないかという懸念を聞く。
 政府は、収益向上の一助になるよう、中小零細企業に対する設備投資や金融支援を充実させてもらいたい。
 地域格差、職種による格差をなくすという大前提を堅持していきたい。


2020年08月01日土曜日


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