社説

コウナゴ不漁/地域漁業へのリスク低減を

 宮城、福島両県のコウナゴ漁がこれまでにないピンチを迎えている。今春は水揚げがほぼ皆無で終わり、資源回復の兆しは見えない。地球温暖化が一因と指摘される中、地域の漁業や生態系に及ぼすリスクを抑える努力が欠かせない。
 春漁の代名詞とされるコウナゴは、仙台湾から相馬沖にかけての海域が国内屈指の漁場で知られる。つくだ煮の原料で関西の需要が多く、高級魚として取引される。両県の沿岸漁業を支える魚種の一つだが、昨年から歴史的な不漁が続く。
 宮城の漁獲量は2018年に838トンだったが、19年は27トンに激減し、今年はほぼなしで終了した。18年に1076トンだった福島は19年から2年連続ゼロ。今年は群れが確認できず、漁業者が出漁を見合わせた。
 宮城の漁の中心となる石巻魚市場では1950年の開設以降、初めて入荷がなかった。魚市場のコウナゴの年間水揚げ量は東日本大震災前のピーク時で約5000トン、売り上げは10億円以上を誇ったが、2016年ごろから年々減少。19年は約25トン、約3500万円に落ち込んでおり、水産関係者の落胆は大きい。
 コウナゴの成育サイクルを見ると、成魚のメロウドの産卵時期は12月ごろ。翌年1月にふ化したコウナゴは春の漁期に2〜3センチに育ち、ふ化後2年で繁殖可能な成魚になる。福島県水産資源研究所(相馬市)が今年4〜6月に相馬沖などでメロウドの生息を調べた結果、捕れたのは4月と5月にわずか1匹ずつ。厳しい現状をうかがわせる。
 高水温が苦手なコウナゴは夏に砂に潜る「夏眠(かみん)」という習性を持つ。宮城県水産技術総合センター(石巻市)は地球温暖化で海水温が高く、夏眠の間にも体力が下がって冬の産卵に影響を与えているとみる。
 三陸沖での海水温上昇の理由には海流の変化も考えられる。センターによると、16年ごろから寒流である親潮の南下の動きが鈍くなり、今年は青森県沖で停滞している。
 ただコウナゴ不漁は全国的な傾向で、瀬戸内海や伊勢湾などでも資源が減って回復が見込めていない。本格的な原因解明は研究途上にある。
 コウナゴのような旬の魚種の不振は、漁業への依存度が高い東北沿岸の地域経済にも打撃となる。漁業者を起点に水産加工や製氷、運送といった幅広い業種に波及するため、関係機関は適切な支援策に注力してほしい。
 今後の資源調査で福島側は夏眠の習性を踏まえ、底引き網を使わずに海底の砂を掘りながら採取する方法に変える。まずは地球温暖化を前提にデータの収集、分析を重ねることが肝要だろう。海域の生態系にひずみを生まないよう、多様な魚種の維持に向けた長期的な取り組みも消費者と連携しながら進めたい。


2020年08月03日月曜日


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