社説

コロナ禍の修学旅行/震災を見詰め直す転換点に

 新型コロナウイルスの収束が見通せない中、修学旅行はどうしたらいいか。多くの学校が悩んでいるだろう。
 中止や延期のほか、例えば首都圏を予定していた行き先の変更が考えられるが、この際、修学旅行のありようを問い直してはどうか。特に宮城をはじめ東北では、東日本大震災の被災地という足元に目を向け、子どもたちが防災や復興を改めて学ぶ機会と位置付けてもいいのではないか。
 一つの例を紹介したい。岩手県沿岸北部のある中学校は東京方面への予定を変更。太平洋側を仙台市まで南下する行程にした。
 震災で甚大な被害を受けた三陸鉄道が運行する「震災学習列車」に乗車。釜石市や東松島市の伝承施設などに立ち寄り、被災者や復興に携わる人から話を聞くという計画で、ほぼ「震災一色」の内容に塗り替えた。
 「被災地の生徒であっても当時の記憶があいまいになっている。風化は子どもたちの間でも進んでいる」。担当教諭はこう説明する。
 震災から10年目。地元の被災地を学び直す動きは各地で出始めている。
 仙台市内では、児童らが屋上に避難して津波から免れた震災遺構「荒浜小」を訪れる市内の学校が徐々に増えている。市も昨年から、バス代を助成しており、荒浜小での学習を後押ししている。
 岩手県東日本大震災津波伝承館(陸前高田市)でも、津波被害を受けていない内陸部をはじめ、県内校の来館申し込みが増加。予約した学校の約75%を占めるという。
 施設側は「コロナ禍を受けて修学旅行先を県内に変更した例が多いようだ。理由はどうあれ、岩手に生まれた以上、子どもたちには震災のことをしっかり学んでほしい」と学校側の動きを歓迎する。
 ただし、感染状況により予定通り進まないこともある。一例として紹介した岩手県の中学校も直前になって、被災地を回る修学旅行の延期を決めた。県内での感染例確認などを受け、全ての保護者の同意が得られなかったためという。
 担当教諭は「今回の計画は防災や復興について考える学習旅行として価値がある。今年が難しければ、次年度以降に実現させたい」となお意欲的だ。
 震災の被害が大きかった地域の学校は、震災の怖さ、つらさを思い起こさせることなどを心配し、被災状況を目の当たりにできる施設訪問を避けてきた例もあると聞く。一方で震災の記憶が薄れ、伝承が大きな課題になってきた。
 「震災の実相に触れることは、自然の脅威と、その災禍をどう乗り越えようとしているかを知ることになる」。宮城教育大の小田隆史准教授(防災教育)は指摘する。
 被災地の修学旅行はどうあるべきか。コロナ禍を契機にぜひ、考えてみてほしい。


2020年08月28日金曜日


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