社説

GoToイート/感染防止へ手綱を緩めるな

 経済を回すためアクセルを踏み込みたいところだろうが、急加速できる状況にない。
 新型コロナウイルスの感染防止に向けた飲食店の取り組みは、まだまだ不安を残している。対策を見極め、慎重に利用する必要がある。
 コロナの流行で苦境に陥っている飲食業を支援する事業「Go To イート」。購入額の25%を上乗せする食事券の販売が、早い地域では9月中に始まる。
 事業開始を前に全国の飲食店を対象にした農林水産省の調査で、2割の店が感染防止のガイドラインを順守していないことが明らかになった。
 政府はコロナ感染症対策分科会で、ガイドラインに沿った感染防止策を了承。準備が整った地域から対象店の募集と登録にゴーサインを出したが、感染対策が客観的に安全だと評価される店に限るべきだ。不備が見つかった場合は、登録を取り消すなど厳しい姿勢で臨むべきだろう。
 農水省が5481の飲食店を調査した結果、業界団体のガイドラインが求める対策47項目のうち、8割以上の実施が確認できた店は81%。18%は5〜8割の実施率だった。
 コロナ禍に見舞われて半年以上がたつ。いまだ感染源となる飲食店が多いのは、取り組み姿勢に甘さがあるからだと受け止めるべきだ。
 消毒液の用意や検温はほぼ徹底されているが、客同士が真正面に座る配置を避ける工夫をしているかとなると、6割台に下がる。卓上に調味料や冷水ポットなどを置かないことや、テークアウトと店内飲食客の接触を避ける工夫をしていた店は半数程度だ。
 宮城県内では9月に入り、バーや接待を伴う店などで感染者が急増し、クラスター(感染者集団)が発生した。
 バーの一つは、飛沫(ひまつ)拡散防止のアクリル板を設置せず、従業員がマスクを着用せずに接客。十分な間隔を開けずに会話していたとされる。ガイドラインを守らなければ、クラスターを引き起こす典型のようなケースだ。
 飲食店はコロナ禍の直撃を受けている。帝国データバンクによると、2月以降の全国の関連倒産500件のうち69件と業種別で最も多い。
 客足を取り戻すためには、各店と業界団体が手間をいとわず、地道に自助努力を続けることが大切だ。
 食事券は岩手、秋田、福島など33府県が先行し、発券事業者が販売の準備を進めている。青森、宮城、山形など14都道府県は10月上旬に発券事業者が決まる。
 7月に始まった観光支援事業「Go To トラベル」は、10月から東京が対象地域に追加される。旅行代金の最大15%がクーポンとして使える制度も始まり、広域移動が一段と活発になるだろう。
 だが、落ち込んだ需要喚起を急ぐあまり、手綱を緩めてはならない。感染対策をあくまで優先すべきである。


2020年09月16日水曜日


先頭に戻る