社説

日英協定合意/多方面の連携につなげよう

 欧州連合(EU)からの離脱を決め、新たな連携先を探していた英国と、多国間のつながりを模索する日本との利害が一致した形だ。
 両国政府は、関税を優遇する経済連携協定(EPA)を結ぶことで大筋合意した。詰めの作業を経て署名し、国会の承認を終えて来年1月1日の発効を目指す。
 猛威を振るう新型コロナウイルス対策で国際協調が求められる中、幅広い分野の協力に結び付けられるよう深化させてほしい。
 日英間の貿易は、2019年2月に発効した日欧EPAに基づいている。英国のEU離脱までの「移行期間」である年末までに新しい協定を結ばないと、高関税に戻る恐れがあった。
 合意内容によると、日本から輸出する自動車への関税は段階的に削減する。現在の7.5%を日欧と同じく26年に撤廃する。
 日本製の鉄道車両や自動車部品などにかけている関税は、即時撤廃する。
 対EUより日本側に有利な内容で落ち着いた。英国に生産拠点を持つ自動車メーカーや鉄道関連の企業は恩恵を受けそうだ。
 IT関連を含んでいるのも特徴と言える。ビジネスで使われる設計図のほか、人工知能(AI)の計算方法とされるアルゴリズムについて、新たなルールを作る。
 政府が民間企業に対して情報開示を求めることを禁止する。電子商取引を進める土壌になるという。
 一方、最後までもめたのは農業分野だった。英国は国内向けに成果をアピールする思惑から、ブルーチーズの輸入拡大を求めた。
 特別枠を設ける優遇を意味したが、結局、EUからの同種チーズの輸入が少なかった時に低関税を適用することで歩み寄った。
 日本国内の農家への影響は少ないと予想される。英国にとってEU離脱後、主要国としては初めての通商協定となる日本との交渉を早くまとめたかったとみられる。
 両国ともに米国との厳しい貿易交渉を控える。3カ月という異例のスピードで大筋合意できたのは、懸案の少ない相手とは組んでおくという判断もあったろう。
 英国には約1000社の日系企業が進出している。次の関心は、英国とEUとの最終協議に移っている。
 年内の移行期間終了を巡る交渉は難航し、行き詰まり状態にある。両者は、自由貿易協定(FTA)の締結を目指しているが、域内経済にどちらのルールを取るかに関して対立している。
 ジョンソン英首相は、離脱協定を骨抜きにする法案を英国議会に提案するなど、徹底抗戦の構えだ。
 日系企業にも影響を与える。落ち着いてテーブルに着き、締結に向けて交渉を進展させてもらいたい。


2020年09月21日月曜日


先頭に戻る