社説

コメの販売先送り/今こそ需要拡大に全力を

 収穫作業が本格化している2020年産米について、全国農業協同組合中央会(JA全中)が、20万トン程度の販売を来年の秋以降に先送りすることを決めた。
 新型コロナウイルスの感染拡大などにより、外食産業向けを中心に出荷が低迷。昨年10月の消費税率引き上げに伴う節約志向の高まりもあって需要が落ち込んでいるため、売り急ぎによる米価の下落を防ぐ狙いだ。
 しかし、販売時期を遅らせたとしても、同時に市場に出回る21年産米の作柄や需要動向によっては、米価の下押し圧力が一層強まる可能性がある。生産調整の見直しから3年目を迎えてもなお、全国的には作付けを適正水準に抑えられていない。東北の生産者が過度の需給緩和に不安を募らせているのも当然だ。
 これまで以上に強く飼料用などへの転換を促す一方、主食用についても加工、販売の多様化を進めるなど、需要拡大に全力で取り組んでいく必要があろう。
 農林水産省によると、19年7月〜20年6月の需要実績は前年同期に比べ約22万トン減の713万トン。コメの消費量は食の多様化や人口減少などにより長期低落傾向にあるが、消費税率引き上げやコロナ禍の影響が加わり、減少幅は想定の倍になった。
 JA全中の予測では、20年産米の生産量は731万トンに上る一方、消費量は710万トンにとどまり、差し引き20万トン程度の余剰が避けられない。21年6月末時点の民間在庫量は229万トンに達する見込みで、安定的な米価を維持できる約180万トンを大幅に上回る見通しだ。
 20年産米の作柄は良好で、供給過剰への懸念も強まる。東北では主力銘柄の概算金(60キロ、1等米)がほぼ軒並み6年ぶりに引き下げられた。下げ幅は600〜800円となり、特に山形県産「はえぬき」など、これまで堅調な業務用需要に支えられてきた銘柄の苦戦が目立つ。手取りの減少が農家の経営を直撃するのは必至だ。
 米価への影響を最小限に食い止めるためには、民間在庫量を適正水準の180万トン程度に維持することが不可欠だが、そのためには21年産の生産量を90万トン近く減らさなければならないという。
 作付け抑制だけに頼るのは現実的でなく、積極的な需要拡大策をセットで打ち出す必要があろう。
 例えば、近年売り上げを伸ばしているパックご飯は、手軽さに加え、発芽米や玄米、赤飯など、商品の多様化を進めた結果、単身世帯や高齢者らに受け入れられ、日常食として定着してきた。
 調理時間の短縮や健康志向、節約志向といった潜在的なニーズに応える多様な食べ方を提案することで、消費を伸ばす余地はまだまだあるはずだ。苦しい時だからこそ、攻めの発想を失いたくない。


2020年09月27日日曜日


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