社説

コロナ民間臨調報告/政府は自ら検証しないのか

 死亡率が比較的低く抑えられたのは、備えが十分だったからではない。「結果オーライ」と安易に受け止めることはできまい。
 「新型コロナ対応・民間臨時調査会」(民間臨調)が、半年間の政府の取り組みを検証し、3月の一斉休校と緊急事態宣言など一連の施策について「場当たり的な判断の積み重ねだった」と断じた。
 民間臨調は独立系シンクタンクが設立した。財界、研究者らが安倍晋三首相(当時)や閣僚、官僚ら83人から聞き取った。
 検証の焦点は、一斉休校など初期の感染拡大防止対策の決定プロセスとその是非だ。
 一斉休校は、専門家の「コロナに対する闘いが瀬戸際にきている」との発言が影響し、安倍首相が急きょ決断した。教育現場や各家庭への影響が大きい問題にもかかわらず、文部科学省や専門家会議(現在は廃止)に事前相談はなかった。
 聞き取りに対し、専門家会議の関係者は一斉休校を「疫学的にはほとんど意味がなかった」と指摘した。
 学校での集団生活で生じる「3密」を回避するためとはいえ、混乱ばかりが目立った。
 ひとり親世帯などでは、子どもを預ける場を確保し、学校側は休校中の対応を急いで決める必要に追われた。準備期間が全くない突然の休校が批判されるのは当然だ。
 休校決定の連携不足が他の施策に悪影響も及ぼした。
 専門家会議は3月中旬、欧州で感染が拡大しているとして水際対策の強化を求めた。
 政府は首相が主導した一斉休校に対する世論の反発と批判の大きさに消耗していたという。このため欧州旅行の中止を首相に進言できなかった。その後感染が拡大し、官邸スタッフは「一番悔やまれる」と振り返った。
 大きな転換となる局面で、冷静さを欠いた判断ミスだ。施策を戦略的に練っていないのが要因だ。
 「アベノマスク」の全世帯配布も、官邸スタッフが「総理室の一部が突っ走った。あれは失敗」と証言している。
 報告書は、決定プロセスと結果の検証を可能にするため、議事録を残すことも課題だと指摘した。休業要請に応じやすいよう経済的な補償の法制化なども提言した。
 休業補償に関しては、全国知事会が地域の実情に応じた対策を可能にするため、自治体の権限強化を訴えている。
 民間臨調の報告を待たずとも、経済と感染防止を両立させるためには、全国一律ではなく、地域ごとのきめの細かい、タイムリーな施策こそ有効なことが明白だ。
 安倍氏は欧米に比べて感染者数や死者数を抑え込んだとして「日本モデル」と自賛した。民間臨調の検証結果と認識のずれが、これほど大きいのはなぜか。政府は自ら検証する責務を負うはずだ。


2020年10月15日木曜日


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