社説

RCEP署名/保護主義の流れ止める礎に

 アジアに巨大な自由貿易圏ができる。コロナ禍の世界で近年強まる保護主義の流れに歯止めをかける動きとして歓迎したい。
 日本、中国、韓国など15カ国が「地域的な包括的経済連携(RCEP)」に合意し、協定に署名した。参加国の国内総生産(GDP)と人口が合計で世界の約3割を占める最大級の経済圏だ。
 日本にとって貿易額1位の中国と3位の韓国が含まれる初めての経済連携協定(EPA)ができたことの意味は大きい。
 署名したのは日中韓のほか、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国とオーストラリア、ニュージーランド。
 環太平洋連携協定(TPP)や日米貿易協定、欧州連合(EU)とのEPA発効に加え今回のRCEPで、日本の貿易額に占める自由貿易協定のカバー率は従来の5割強から約8割に上がる。
 政府によると、日本産の自動車部品など工業製品に参加国が課す関税は段階的に下げ、最終的な撤廃率は91.5%となる。
 特に自動車産業への恩恵は大きい。日本のメーカーは国内産のエンジンなどの部品を中国やASEAN諸国に輸出し現地で組み立てて販売したり第三国に輸出したりしている。サプライチェーン(部品の調達・供給網)の効率化が一層進むことが期待される。
 マツタケや紹興酒、マッコリなどの関税が将来撤廃される一方、コメや麦、牛豚肉など日本にとっての「重要5品目」は対象外とされた。消費者にとって安くなる品目は少なくなるが、産地への影響は出ない見通しだ。
 投資ルールも合意し、政府が進出企業に技術移転を要求することを禁じた。電子商取引(EC)や知的財産権保護には国際ルールが適用される。これまで消極的だった中国にも規制の網が掛かることになる。
 RCEPの交渉が始まったのは2013年。参加国の間で経済の発展状況や政治体制が異なり、交渉は難航を極めた。新興国の国内事情に配慮して関税削減の水準をTPPより抑えるなど妥協を重ねながらも合意に持ち込んだことは評価される。
 ただ、インドが参加しなかったのは日本にとって痛手だった。インドは対中赤字の拡大などを懸念し、交渉の最終段階で離脱した。経済・軍事両面で影響力を拡大する中国に、たがをはめようとした日本の思惑は崩れた。
 インド政府の関心は国内産業保護にあり、近いうちに署名することはないとの見方が強い。
 協定には、インドの早期復帰が可能となる特別措置が設けられている。中国へのけん制は別としても、人口13億を抱えるインドが参加するかどうかは貿易圏の存在感にも関わる。日本は粘り強く参加を働き掛けるべきだ。


2020年11月25日水曜日


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