SEVEN BEACH PROJECT×今できることプロジェクト

七ヶ浜10人インタビュー

あの日までの10年、あの日からの10年、ここからの10年

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海で育まれる心の通い合いに、
地域愛が生まれる可能性を信じて。
松渕秀人[まつぶちひでと]さん
秋田県出身、1975年生まれ。陸上自衛隊多賀城駐屯地に勤務する陸上自衛官。21歳でサーフィンを始め、40歳の時、JPSA(Japan Surfing Association)のプロテストに合格してプロサーファーに認定。数々の大会に出場し、ランキング上位を狙っています。サーファーとしての活動拠点は菖蒲田浜。ロングボードの華麗なライディングで多くのファンを魅了中です。その直向きでストイックな姿勢ゆえに、浜に集まる若いサーファーたちから憧れの存在になっています。

21歳から始めて40歳でプロサーファーに

 松渕さんがサーフィンを始めるきっかけは、21歳の時に飛び込んだ地元のサーフショップ。「本当はウインドサーフィンに興味があったんですが、道具を揃える予算が厳しくて。そうしたら、オーナーさんがロングボードを勧めてくれたんです」と、笑います。元々、海が大好きだった松渕さんは、すぐにサーフィンに熱中。早朝、3〜4時間の練習を重ねてテクニックを磨き、大会にも出場。日本のアマチュアサーフィン界のグランドチャンピオンを決定する『ALL JAPAN SURFING GRAND CHAMPION GAMES 2013』では、ロングボードメンズオープンで見事優勝を飾りました。そして30歳の時、プロを目指すことを決め、10年かけてプロテストに挑み、40歳でプロサーファーになることができました。

多くをもたらした七ヶ浜の海との出合い

 サーファーとして活躍する一方、陸上自衛官の任務にも真摯に向き合っている松渕さん。震災発生時は、人命救助の任務で岩手県釜石市に向かいました。そこで目にしたのは、大津波の被害を受けた凄惨な現場。あまりの光景にショックを受け、記憶のフラッシュバックに悩まされた時期もあったそうです。そして翌年の2012年4月、多賀城駐屯地に赴任。その勤務地のほど近くに海浜があることを知り、七ヶ浜へ足を運んでみたところ「何てきれいな海があるんだ!と、とても感動しました」。当然、菖蒲田浜で一層サーフィンに入れ込む松渕さん。「サーファーだけでなく、地元の方との交流も生まれました。SEVEN BEACH PROJECTの活動やメンバーもこの浜を通じて知り、ビーチクリーンに参加するまでになったんです」と教えてくれました。

地域の人々を幸せにする生き方の発信を

 自衛官として、プロサーファーとして過ごした10年はあっという間だったと振り返る松渕さん。「恐ろしい災害があったけど、海は誰もが笑顔で楽しい気持ちになれる場所であって欲しいと思うんです」と、波飛沫を見つめながらそう語ります。そして最近出合ったのが、“ウェルビーイング(Well being)”という言葉だそうで、これが意味するのは“強く生きる、幸せを感じて生きる”という幸福の概念。「私は、サーファーとしてこの言葉を実践してきたし、サーフィンを通して出合った方々とウェルビーイングな生き方を目指していきたいと思っています。海辺のごみ拾いやサーファー同士挨拶を交わすのも、ウェルビーイングな考えにつながりますよね。そんな積み重ねが一つの文化となって地域に根差していけば、いつか社会全体が良い方向に向かっていくんじゃないかと考えています」。七ヶ浜の素晴らしさに巡り合い、その幸せを共有しようと考える松渕さんは、この浜がサーフィンを通してウェルビーイングの発信基地になることを願い、今日も良い波を求めて海へ漕ぎ出します。