
とうほくドローンeye/おくのほそ道編(9)仙台/秋の気色
〈あやめふく日〉に芭蕉は仙台に着いた。旧暦の端午の節句の前日に当たり、家々の軒先に今で言うショウブを飾ったらしい。
榴岡天満宮や薬師堂を見て回り、歌に名高い宮城野も訪れた。今の暦なら6月20日すぎとあってハギは咲いていなかったが、秋の光景に思いをはせる。
仙台では、画工の加右衛門という人物が何くれと世話してくれた。芭蕉は敬意を込めて加右衛門を〈風流のしれもの〉と呼ぶ。自分もまた、風流の道をたどってみちのくまで来た。
「芭蕉は仙台を満喫した様子です。それも加右衛門との出会いがあったからでしょう」と仙台文学館学芸員の庄司潤子さん(46)。
〈あやめ草足に結(むすば)ん草鞋(わらじ)の緒〉は、はなむけに草鞋を贈った加右衛門への感謝の句だった。
名取川を越えて芭蕉は仙台に来たことを実感したよう。川の上から見渡すと、ビル群のまばゆい光がかつての宮城野を包んでいた。
(写真部・庄子徳通、小林一成)
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2019年10月31日