考えよう、宮城県美術館のコト。

コラム

移転候補地に大型ギャラリー新設を

宮城教育大名誉教授 渡辺雄彦(86歳・仙台市太白区)

 降って湧いたような、宮城県美術館移転問題がマスコミをにぎわしている。移転には反対の意見が圧倒的に多いことが分かった。移転方針が最初に示された11月の県有施設の有識者懇話会で、異論が出なかったというのはショックである。この懇話会には美術関係者が入っていないというのも不思議な話である。県議会の11月定例会でも移転新築に対する質問が相次いだ。県民の代表である県議にも理解されていないようだ。

 私も県美術館移転には反対である。理由の一つは立地条件である。既に多くの方が指摘しているように、今の素晴らしい環境を捨てるのはあまりに惜しい。仮に移転したとして、現況に匹敵する環境の整備はとうてい無理であろう。

 もう一つは今の建物を残したいからである。老朽化と言われても門外漢の私にはどの程度の老朽化なのか分からない。放置できないほどの危険性があるのか、補修すれば使用に耐えられるのか。設計した故前川国男氏はどの程度の耐用年数を想定していたのだろうか、関係者に聞いてみたい。

 仮に移転となれば、約10年遅れて建てられた佐藤忠良記念館はどうなるのかも気に掛かる。古い建築物は壊して新しく建て替えるという発想から脱却し、古い物を大切に使う考え方になってほしい。

 私が知る限りほとんどの県に県総合美術展(県展)がある。宮城県に県展はないが、河北美術展という公募展がある。この河北美術展も作品を展示する広い会場がなく、対応に四苦八苦している。これまでは主に百貨店を会場に展示、公開してきた。近年は作品が大型化したこともあり、より広い展示スペースが必要となっている。その結果、会場が迷路のようになった上、離れた場所に第2会場を設ける必要がでてきた。出品者、鑑賞者ともに不幸な状態が続いているのだ。しかも、この状態は好転する見通しが立っていない。

 毎年秋に開催される宮城県芸術祭でも同じ悩みを抱えている。現在、主会場を仙台市青葉区にある「せんだいメディアテーク」にして開催している。絵画、写真、書道など幅広い分野の作品を展示するため、分野ごとに期間を区切り、約3週間にわたり5、6階を借り切って開催している。会場を占有する期間が長いため、他の利用希望者からは不満も聞かれる。

 この他にもせんだいメディアテークでは、全国公募団体の仙台巡回展、県内で活動する複数の美術団体の展示会も開かれており、利用希望が競合することがままある。希望が重複すればくじ引きとなるが、外れれば開催を断念しなければならない。

 以上のことを考えれば、仙台市には大型ギャラリーが必要である。仙台市宮城野区の仙台医療センター跡地には県美術館を移転新築するのではなく、大型ギャラリー「みやぎアートセンター」(仮称)新設を望みたい。同じ場所に新築される県民会館は舞台芸術を扱う。アートセンターとの親和性も高い。長年の懸案を解決するため県当局の英断を切望する。

持論時論(2020年1月27日)

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