考えよう、宮城県美術館のコト。

コラム

県民の議論を県政に反映させよう

元宮城県職員 二階堂通正(76歳・仙台市若林区)

 宮城県美術館の移転・新築方針が降って湧いたように出てきて大変驚いている。なぜ移転しなければならないのか、明確な理由が分からない。なにより、この方針が示された経過が不透明だ。県議会の11月定例会でも質問が相次いだ。関係団体から現地存続の要望が出ている。移転には疑問や反対の声が多いのではないか。

 美術館建設は宮城県民の念願だった。基金を積み立てて建設し、美術品を収集してきた。建設場所をどこにするか、議論を経て現在の川内が最適地とされ、1981年11月3日に開館した。長年にわたって検討、議論、準備してきたのが今の県美術館である。

 世界的な建築家、故前川国男氏の設計による近代的な建物で、形、色ともに落ち着いているのはもちろん、前庭・後庭、アリスの庭に彫刻を配置し、美術館にふさわしい雰囲気と景観を醸し出している。美術館は収蔵している美術品だけではなく、建物や庭などを含めた空間も一体となって形成されているものだ。

 90年には本県出身の彫刻家佐藤忠良氏の作品を収蔵・展示した「佐藤忠良記念館」が併設され、いっそうの充実をみせている。

 立地条件も見逃せない。広瀬川河畔にたたずみ、道路を挟んで東北大、仙台二高が並び立つ。南側には仙台市博物館、青葉城跡、川向かいには宮城一高や尚絅学院高、聖ドミニコ学院高も立地しており、静かで歴史、文化の薫り漂う文教地区である。県民の芸術文化の発表の場、憩いの場として広く県民に愛されている。そればかりではない。仙台市の観光ルート、市内循環観光バス「るーぷる仙台」のコース上に位置しており、地下鉄東西線の開通により存在価値はより高まっている。

 宮城県教委はかつて教育基本方針の三本柱の一つに「かおり高い芸術文化」を挙げていた。重点的に充実に努めるというものである。その基本精神は変わらないはず。美術館はその中核をなしている。

 県美術館は建設以来38年が経過し、施設の老朽化が進んでいることは間違いない。だからこそ、リニューアルに関する懇話会で改修計画を策定してきたのではなかったのか。それを全て覆す形でいきなり移転・新築を打ち出すというのはどういうことだろう。県民会館との「一体管理運営」ばかりが強調され、芸術や文化、美術館の存在価値、県民の意向、移転後の文化的メリット、デメリットなど議論されたのだろうか、疑問が残る。

 村井嘉浩知事の発言は「美術館の移転ありき」のように聞こえる。現在地の美術館の建設過程や存在意義、関係団体や学校、県民の声、利用者の意見をよく聞いて政策判断してほしい。知事の芸術文化に対する姿勢、真価が問われる重要な判断になろう。今回の移転・新築は、県美術館の在り方、ひいては芸術文化との関わり方を考える良い機会だろう。県民皆で議論し、その結果を県政に反映させようではないか。

持論時論(2020年1月6日)

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躯体は健全、当たり前の手入れで100年もつ
建築設計事務所顧問 大宇根弘司
環境と共にある作品 移設は破壊行為
法律事務所勤務 那須香緒里
鑑賞にふさわしい環境を優先すべし
添削指導員 小林広子
建物の活用へ財政問題含めオープンな議論を
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価値ある建物と環境を引き継いで
主婦 佐野のぶ
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美術家 前宮城県芸術協会理事長 大場尚文
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元宮城県職員 二階堂通正
公共施設の耐用年数をどう考えるのか
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