考えよう、宮城県美術館のコト。

コラム

公共施設の耐用年数をどう考えるのか

医師 中井祐之(80歳・仙台市泉区)

 宮城県が、仙台市青葉区川内の宮城県美術館を東京エレクトロンホール宮城(県民会館)と合わせ、宮城野区の仙台医療センター跡地に移転、新築する方針だと報道された。多くの県民にとって寝耳に水だろう。早速この投稿欄に、疑問の声が複数寄せられている。

 11月29日の本紙社説も、戦後の日本建築界をリードした前川国男氏が設計し、市民になじんだ美術館を移転するに当たり十分な議論が行われたのかと疑問を呈した。さらに、都市計画の観点から仙台市と政策決定のプロセスを共有し、県民、市民の声に耳を傾けて調和の取れた都市づくりを行うべきだと主張している。同感である。

 私はこの計画に対して、疑問点を二つ挙げたい。

 一つ目は、いつの間にそのような計画が持ち上がったのかということである。報道によると、県有施設の再編に関する有識者懇話会で、県はホールと美術館の集約は地域の文化振興につながると強調、委員から異論は出なかったという。しかし、宮城県教委による宮城県美術館リニューアル基本構想や、昨年6月の宮城県美術館協議会の会議録には、施設の老朽化と企画の増加に対応するため既存建物の改修(増築も含む)を基本に検討していると記されている。

 美術館を運営する側がリニューアル計画を策定しているにもかかわらず、県がいつどのレベルで移転新築に方向転換したか不明だ。費用対効果や美術館の建物自体の価値について十分な議論がないまま、移転ありきで進められたのではないかという疑念が拭えない。

 二つ目は、公共施設の耐用年数についての県の姿勢である。現在、高齢化の進行と人口減により、高い経済成長は望めなくなっている。限られた資源を大切に使うという観点からも、スクラップ・アンド・ビルドの時代は終わった。

 今回の美術館移転構想で思い出されるのが、川内にあった宮城県スポーツセンターである。1964年に建築され、2006年に取り壊された。使用期間はわずか42年だった。宮城県美術館は建築からまだ38年しかたっておらず、鉄筋コンクリート建築物の耐用年数に達しているとは考えにくい。設備の老朽化は改修によって対応可能であろう。美術館の機能拡大には、周辺にある土地を利用し増築して対応することもできるだろう。この建物は美術館としてまだまだ使えるのである。

 自治体の美術館の例として、やはり前川氏が設計した現在の東京都美術館は1975年に完成、37年後に大規模改修し再オープンしたことを指摘しておきたい。

 宮城県も仙台市も、かつてハコモノ行政を巡る汚職事件で首長が辞職した苦い経験がある。そのため公共施設充実が遅れた面があるかもしれない。しかし、それを取り戻すかのように事業を拙速に進めてはならない。民意をくみ取らずに事を急げば、何か裏の理由がありはしないか、といらぬ臆測を生まないとも限らない。県には有識者懇話会にとどまらず、県民に広く意見を求める責任がある。

持論時論(2019年12月22日)

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