考えよう、宮城県美術館のコト。

コラム

唐突感否めず 多方に影響

 仙台市青葉区川内にある宮城県美術館を、東へ約5キロ離れた宮城野区の仙台医療センター跡地に移転させるという。2000席の音楽ホールを有する新しい県民会館と一体化して新築する。県の懇話会で方針案が了承された。
 美術ファンだけでなく、市民から愛着を持たれている施設だけに唐突な印象を受ける。まちづくりの行方にも多大な影響を与えよう。広く県民の納得を得る説明が必要だ。移転の理由として県は、建築から38年で老朽化し、現地での建て替えに2、3年の休館を伴う点などを挙げる。
 半世紀前に美術館構想が浮上したころ、行政や芸術団体、経済界が立地場所を巡って激論を交わしたのは語り草となっている。
 有力だった榴岡公園を抑えて川内に決まったのは、文教地区として東北大キャンパスや植物園、博物館などと調和し、「芸術文化拠点にふさわしい」との見地からだった。
 広瀬川のほとりは、景観と環境保全の面から厳しい建築規制をクリアしなくてはならず、あえて難工事に挑んだ。設計を担ったのは近代建築の大立者、前川国男氏だった。
 緑の空間とマッチし、市民になじんでいる美術館を移すのに当たり、これまでのいきさつや価値について十分な検討を行い、各方面の意見を聞いたのだろうか、はなはだ疑問である。
 気掛かりなのは、まちづくりとの整合性である。移転先の一帯には美術館・県民会館に加え、JR貨物駅跡地に整備される広域防災拠点、プロ野球の本拠地など県の大規模施設がひしめくことになる。
 仙台駅の東側に副都心を造るようにも見える。都市計画を大きく塗り替える可能性がある。人の流れは確実に変わるだろう。
 一方で、仙台市の都市計画は近年、駅の西側に重きを置く。都心再構築の掛け声とともに、定禅寺通を杜の都のシンボルロードとして、にぎわいを生む施策を打っている。
 歩道にテーブルを並べ、カフェを楽しむ社会実験を試行中だ。「一番町-定禅寺通-西公園と回遊性を高め、活力を呼び込もう」と経済界とともに事業費を投入している。
 西と東で、統一が取れていないように映る。大きな事業を興すとき、自治体間で擦り合わせながら進めるのが常道である。県有地に余裕があるから右から左へというのとは次元が違う。
 県と市は十分に意思疎通を図っているのだろうか。ちぐはぐに見える進め方は、客席2000の公共ホールを、それぞれが同市域に計画している「音楽ホール問題」の構図と似ている。
 財政難の中、納税者にしてみればコストを無駄にせず、効率良く使ってほしい。両者は政策決定のプロセスを共有し、県民、市民の声に耳を傾け、調和の取れた都市づくりを行うべきである。

社 説(2019年11月29日)

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