考えよう、宮城県美術館のコト。

コラム

丁寧に進め最善の道探ろう

 多くの見直しを求める声にもかかわらず、従来の方針を貫くのか。さまざまな意見を踏まえて次善の道を探るのか。一つの節目を迎えたと言えよう。
 宮城県美術館と県民会館を仙台市宮城野区の仙台医療センター跡地に移転・集約する県の方針案を巡り、仙台市長と県知事の会談が行われた。
 郡和子市長は美術館について「市民に愛され、定着している」と前置きし、「関係機関が一体となってエリアの機能を高めてきた経緯を踏まえてほしい」と慎重な進め方を求めた。
 村井嘉浩知事は移転集約の意義をあらためて伝える一方で、「多角的に意見を聞いて考えたい。時間をかけて検討する」と応じた。
 都市計画への影響についても「まちづくりと整合性を取りたい」と配慮をにじませた。移転の構えは崩さないものの、柔軟な対話に踏み出したように聞き取れた。
 両者を取り巻く状況をみても、急いで結論を出す必要はなく、腰を据えて議論し、調整を図るのは理にかなう。
 美術館の果たしてきた役割や価値について専門家の意見を聞き、丁寧かつ十分な手順を踏んで最善の選択を導きだしてもらいたい。
 移転案がこじれた一因として、現地で改修するとしたリニューアル基本方針を覆したことが挙げられよう。この点の検証は不可欠となる。
 県は、国の「公共施設等の適正管理措置」がうたう集約化事業に乗れば、有利な起債制度を活用して実質45%を国費で負担してくれるとメリットを説明する。
 しかし、全国では公民館や学校、役所庁舎の統合に使われている。県美術館と大規模な音楽ホール(県民会館)の集約に使うのは、かなり珍しいのではないか。
 この制度は、個々の施設の魅力や価値を評価する仕組みではなく、財政テクニックの上で、有利さに目を奪われるという欠点を持つ。
 さらに、「新施設の延べ床面積は、現行施設の面積を下回らなければならない」との条件がある。美術館の収蔵品があふれ、県民会館も手狭だから広い敷地へ引っ越そうというのに、整合性は取れるのだろうか。
 県によると、別々にあるレストラン、会議室、講堂を一つにし、縮めた面積をメインの会場に充てることでクリアできそうだという。
 それでも十分な芸術活動を行えるのか、疑念は消えない。やはり文化拠点施設には不向きな制度に映る。
 国と地方の財政は厳しく、借金残高は合わせて1100兆円に上る。どちらが負担しても将来世代につけを回すことに変わりはない。
 移転案の全体像とメリット、デメリットをもっと明確に示してほしい。その上で文化施設のありようを含め、議論を深めていきたい。

社 説(2020年2月4日)

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