考えよう、宮城県美術館のコト。

コラム

「コロナ後」見据えて慎重に

 「緑豊かな広瀬川のほとりにあってこそ、ふさわしい」「迫り来る財政難を前に、県有施設を集約することで負担を軽減したい」
 昨年11月、宮城県は仙台市青葉区川内にある県美術館を、宮城野区の仙台医療センター跡地へ移転させる方針を明らかにした。
 唐突とも言える発表以来、是非論が巻き起こった。一つの施策が、これほど関心を集めるのは異例のことだ。
 計画見直しの声に押されて結論は先送りされ、さらに新型コロナウイルスの影響で小休止していたというのが、これまでのいきさつである。
 県は現地存続と移転新築について精査検討し、10月以降に方向性を示す。本年度内に基本構想をまとめる。
 窮屈なスケジュールという印象を受ける。第2ラウンドに当たっては、検討プロセスをつまびらかにし、美術、建築の専門家の意見をしっかりと聞き、結論を急がず丁寧に進めるよう求めたい。
 県は、調査費3600万円をかけて、美術館と県民会館などとの移転集約を検討するため、業者が技術提案する「公募型プロポーザル方式」による基本構想づくりに乗りだしている。
 既に参加申し込みを受け付け、7月中旬に選考する。結果公表を経て8月上旬の契約締結を予定する。
 新しく示されたプランと、現地改修するとした「リニューアル基本方針」(2018年3月)を比較する。「メリットとデメリットを検討し、どちらがよいのか方向性を出す」(県震災復興・企画部) 秋に方向性を判断するとすれば数カ月しかない。19年度、この問題を議論した有識者会議には美術に詳しい委員がおらず、批判を浴びた。
 今回も、肝心な視点を欠いたまま進む可能性がある。美術や建築の専門家を入れた第三者機関を設けて審議にかけるべきだ。
 コロナの感染拡大で状況が一変したことも考慮しなくてはならない。
 2000席の音楽ホールを持つ県民会館と美術館を結び付ければ、文化芸術の拠点となり、集客の相乗効果を見込めると県は説明する。
 規模とにぎわいを追い続けることでいいのかどうか。大型公共施設のありようを含め、出発点に立ち返って考える時と思われる。
 状況の変化を捉え、多様な選択肢を用意するのが望ましい。2年前の「リニューアル方針」と、プロポーザル提案を比べる二者択一というのは狭すぎないか。
 全体規模、展示スペース、回遊路を再点検し、縮小版など複数案を加えてもいい。
 第2波、第3波も予想され、「新しい生活様式」を見極めるには数年かかる。美術館移転は拙速に進めるテーマではなく、様子を見てからでも遅くはない。禍根を残さないよう熟慮を重ねてほしい。

社 説(2020年7月8日)

コラム一覧

移転予定地の災害リスク、適切に評価を
元外務省参与 迫久展
「マアヤン」に込められた原爆の記憶と祈り
東北大大学院医学系研究科教授 虫明元
創作を支える教育機能 維持できるか
東北福祉大鉄道交流ステーション学芸員 鈴木佳子
県環境も野外作品の一部、移動は破壊を意味する
環境造形作家 佐藤達
県民会館とは異なる性質、期待できぬ相乗効果
元劇場プロデューサー 竹村公人
美しい施設を活用し存続させよう
東北大白菊会事務局長 大村昌枝
美術館は都市の顔 時間をかけて幅広い議論を
前東北学院大学長 松本宣郎
歴史と先達の思いが創る 唯一無二の景観
無職 東北大名誉教授 蟹沢聡史
財源論による正当化が民主主義を破壊
無職 医師・東北大大学院生 矢坂健
資源生かし、周辺一帯を「猫ワールド」に
無職 三島隆司
機能性高い美術館、現地改修で経費削減を
前宮城県美術館長 有川幾夫
「建てるとは住むこと」を学べるか
東北大教授 森一郎
観光資源として作品の充実とサービス向上を
東北大名誉教授 宮崎正俊
躯体は健全、当たり前の手入れで100年もつ
建築設計事務所顧問 大宇根弘司
環境と共にある作品 移設は破壊行為
法律事務所勤務 那須香緒里
鑑賞にふさわしい環境を優先すべし
添削指導員 小林広子
建物の活用へ財政問題含めオープンな議論を
医師 伊藤健太
広瀬川が生んだ立地、文化施設にふさわしい
東北大名誉教授 蟹沢聡史
移転候補地に大型ギャラリー新設を
宮城教育大名誉教授 渡辺雄彦
価値ある建物と環境を引き継いで
主婦 佐野のぶ
有形無形の芸術的資産が育まれた
美術家 前宮城県芸術協会理事長 大場尚文
県民の議論を県政に反映させよう
元宮城県職員 二階堂通正
公共施設の耐用年数をどう考えるのか
医師 中井祐之
長年かけて育てた環境を守って
会社員 木村益枝