考えよう、宮城県美術館のコト。

コラム

目立つ粗さ もっと丁寧に

 仙台市青葉区川内にある宮城県美術館を移転する構想を巡り、さまざまな意見が寄せられている。

 多くの異論の声を受け、県は「美術館と県民会館などを集約・複合化する方向でさらに検討を進める」と結論を先送りした。

 ことし10月以降、あらためて方向性を示し、来年1月ごろに基本構想の中間案、3月までには最終案をまとめる段取りだ。

 これまでの説明を聞き、ふに落ちないところがあるので何点か、整理してみたい。

 村井嘉浩知事は2月の県議会の答弁で、移転集約のケースと現地で改修するケースの建設費を比較している。

 新美術館に約100億円、音楽ホールである県民会館に200億円かかるものの、国の有利な起債制度を活用し、112億円の交付税措置を受けられるという。

 川内での改修には60億円を要する。仙台医療センター跡地の県民会館を加えた260億円のうち、補助の分は11億円にとどまり、県支出は249億円となる。

 移転の方が改修より約60億円抑えられるという説明である。さて、県民会館の200億円と美術館の100億円はどこから出た数字だろうか。

 県震災復興・企画部によると、秋田市の秋田県・市連携文化施設(来年12月完成予定、207億円)と、青森市の青森県美術館(2006年開館、110億円)の事例をそのまま引用していた。

 改修費60億円は、2年前に有識者がまとめた「リニューアル基本方針」から取った。 ところが、方針を策定した複数の委員から「当時、移転話はなく、比較対象になり得ない」「最大に見積もった数字。財政難とコロナ禍を踏まえれば、削減できる」と疑問を呈されている。

 県に手持ちの試算がなかったとはいえ、根拠の薄い数字で算定比較したのは、いささか不用意に映る。

 粗いと言えば、建物の耐用年数もそうだろう。「県公共施設等総合管理方針」に沿い、建築から65年をライフサイクルにしている。

 リニューアル方針を基に現地改修したとしても、20~30年後に寿命を迎え、建て替えることになる点を理由の一つに挙げている。

 県有施設をほぼ一律に捉える考え方を取っている。これに対し、現場で設計監理に携わった建築家はきっぱりと否定する。

 美術館には特別の外壁工事や仕様を施しており、「コンクリート躯体(くたい)は健全で、改修すれば、あと50年、100年は持つ」。学術専門的には建築家に分がありそうだ。

 こうした論点について、県は基本構想づくりの中で精査すると言うが、要となる骨格は詰めておくべきだろう。

 県民の関心事となっているだけに、より丁寧な政策プロセスを踏んでほしい。

社 説(2020年8月27日)

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