新聞協会賞受賞特集

 2018年度新聞協会賞に、河北新報社の連載「止まった刻(とき) 検証・大川小事故」(編集部門)と「いのちと地域を守る」震災伝承・防災啓発プロジェクト(経営・業務部門)が選ばれた。大震災の被災地に立脚し、被災者と歩む新聞社の責務を果たした−と、ともに高く評価された。

特集

■ 連載 検証・大川小事故

  • <新聞協会賞授賞>あの日分刻みで再現

     長期連載「止まった刻(とき) 検証・大川小事故」は、東日本大震災の津波で児童・教職員計84人が犠牲になった石巻市大川小の事故を調査報道で詳細に検証した。
     連載は1月にスタートし、6月下旬まで本編計49回(11部構成)を掲載。仙台高裁判決や大川小閉校特集など100本近い関連記事とともに大川小事故や裁判の論点を多角的に報じた。
     検証は(1)3月11日午後2時46分の地震発生から津波襲来まで(2)震災直後に児童らに聞き取った証言メモの廃棄など石巻市による事後対応(3)仙台高裁で焦点となった事前防災−という三つの大きな柱で構成した。
     第2部「激震」−第5部「漆黒」は、生存児童らの証言や裁判資料などを基に地震発生から津波襲来までを分刻みで克明に再現し、大川小事故の全体像を浮き彫りにしようと試みた。
     第6部「地獄」は、遺体捜索の惨状と行方不明の児童を抱える遺族の苦悩を、終章の第11部「未来をひらく」は、悲しみに満ちた学び舎を「命の学び舎」にしようと語り続ける生存児童らの姿を紹介した。
     東北被災3県沿岸の小中学校と、南海トラフ巨大地震の発生が懸念される東南海7県沿岸の小学校を対象にアンケートを実施。大川小事故を踏まえた学校防災の現状と課題も探った。

  • <新聞協会賞授賞>目背けず取材今も葛藤/大川小取材班

     最も安全なはずの学校にいたのに、なぜ、子どもたちは亡くなったのか−。長期連載「止まった刻(とき) 検証・大川小事故」を始めたのは、この命題に真正面から取り組むためだ。
     連載で紹介できたのは関係者の一部にすぎない。児童や教員の遺族、地域住民ら関係者の多くから取材を拒まれた。深い悲しみや怒りに満ちた瞳に繰り返し直面し、インターホンを押すのを何度もためらった。
     「そっとしておいてほしい」という声は今も根強い。無念のうちに亡くなった犠牲者を思い、足元で起きた悲劇から地元紙が目を背けてはいけない−と自らを鼓舞した。
     「賞に値する仕事だったか」「このテーマで受賞していいのか」。取材班には今も葛藤がある。ただ、受賞を機に大川小事故に改めて注目が集まれば幸いだ。多大な協力をいただいた関係者の皆さまに紙上を借りて深く感謝したい。

  • 大川小の津波事故

     2011年3月11日午後2時46分、宮城県沖で起きたマグニチュード(M)9.0の東北地方太平洋沖地震による津波で、石巻市大川小(児童108人)の児童70人が死亡し、4人が今も行方不明になっている。学校にいた教職員11人のうち、男性教務主任(57)を除く10人も犠牲となった。当時校長は休暇で不在だった。学校は海抜1.1メートルで北上川河口から約3.7キロ離れ、市の津波ハザードマップで浸水予想区域外だった。地震発生から約50分後に津波の第1波が到達し、最高水位は高さ約8.7メートルに達した。学校管理下の事故としては戦後最悪とされ、児童23人の遺族が市と宮城県を提訴。仙台高裁は18年4月26日、事前防災について学校と教育委員会の組織的過失を認める初判断を示した。約14億円の賠償を命じる判決を不服として、市と県が5月に上告した。

  • <授賞理由>丹念に証言拾い克明に被害再現

     河北新報社は、東日本大震災による津波で児童と教職員計84人が犠牲になった石巻市大川小の事故を検証する連載企画を2018年1月12日から49回にわたり掲載した。
     生存者が限られる中、関係者の証言を丹念に拾い地震発生から津波襲来までの50分間を分刻みで克明に再現し、避難先決定プロセスの核心に迫るとともに、巨大地震に備え全国の学校が共有すべき課題も多角的に報じた。
     真相究明を求める遺族の思いに応えるため、地元紙の使命として取り組んだ一連の企画は、震災の貴重な記録となり、今後の学校防災の指針になる報道として高く評価され、新聞協会賞に値する。


■ 防災・減災の取り組み


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「むすび塾」は、東日本大震災の教訓を踏まえ、地域住民らと一緒に「次」の地震・津波に備える巡回ワークショップです。

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「次世代塾」は、若い世代を対象にした東日本大震災の伝承講座です。被災者らを講師に招き、震災の教訓を学びます。

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