観賞記・よみ芝居「あの日からのみちのく怪談」 コマイぬ仙台公演

祈り、願いを込めて朗読する芝原さん
ギター(横山さん)とバイオリン(かじさん)の演奏で、よみ芝居を届ける菊池さん(中央・左)と冨樫さん(中央・右)

 東日本大震災後、東北の作家たちが綴(つづ)った海辺の怪異譚をまとめた「あの日からのみちのく怪談」(東北怪談同盟編)を、よみ芝居にして各地で公演しているコマイぬ。石巻市出身の俳優・芝原弘さんが代表の演劇ユニットだ。先日は仙台市の宮城野区文化センター・パトナシアターであった。終幕、ステージに見えたものは生き残った者たちと、震災で犠牲になった者たちが一緒になって繰り広げる“祝祭”だった。

 約1時間半にわたった「みちのく怪談」。怪談と言っても怖くない。被災地を舞台に語られるのは生者と死者の再会、祈りである。どんな形でもいいからもう一度会いたい−それぞれの切実な願い、思いが紡がれていった。

 今回、最後にハッとした。2年前の女川公演で見えなかったものがステージにわき上がった。

 幾層もの物語を通じて見えたのはあの世と、この世の境界がなくなった“宴(うたげ)”だった。読み手(芝原さん、菊池佳南さん、冨樫かずみさん)も、演奏家(バイオリン・かじみなみさん、ギター・横山大地さん)も歌い、奏でる。そこに物語に登場した死者たちが舞い降り、演者らと輪になって楽しそうに歌い、舞っている姿が見えた気がした。死んだのではない。生者たちの心の中に生きている。生き残ったものたちに寄り添い、これからを支えている。

 自然と浮かんだ言葉が「救い」だった。客席にも被災したり、家族や友人を亡くしたりした人がいたはず。語られる数々の物語に自らの体験を重ねたに違いない。その先にコマイぬが朗読の力で見せようとしたのは「祝祭=救い」だったのではないだろうか。

 よみ芝居の世界を立体的に浮かび上がらせたのがギターとバイオリンの音色。物語に合わせて「花は咲く」や「家路」「椰子の実」などを演奏。芝原さんが心掛けたのは「なじみの曲であること」という。最後に使われたのが「満月の夕」。震災当時、被災地を勇気づけた曲で、この日も観客の心にしっかり届いていた。

 東日本大震災から明日でちょうど8年。コマイぬのよみ芝居は続く。(久野義文)

   ◇

 コマイぬよみ芝居は、2018年度宮城野区文化センター震災復興交流事業の一環。2月24日に観賞。

 「あの日からのみちのく怪談」は荒蝦夷(仙台市)が発行。


2019年03月10日日曜日


先頭に戻る