街中に芝居の熱気 いしのまき演劇祭開幕、「R」が先陣

いしのまき演劇祭に初参加のmicさん。一人6役を熱演
震災後、地元の演劇仲間たちと芝居の面白い街づくりに取り組むコマイぬの芝原さん(右)と菊池さん=石巻市かわまち交流センター

 第4回いしのまき演劇祭(実行委員会主催)が2日、石巻市内で開幕した。地元をはじめ県内外から8団体が参加。12月1日までの毎週土・日曜をメインに、いずれかの団体が店舗や施設を使って「秘密」を共通テーマに上演する。街中は芝居の熱気に包まれる。

 先陣を切ったのは、実行委員会代表でもある矢口龍太さんが主宰する「R」。演劇や音楽を企画するユニットで、初日は東京から初参加の女優mic(ミック)さんと、石巻地方を拠点に活動する女優・演出家の三國裕子さんが立ち上げた劇団「うたたね.(ドット)」が登場した。

 会場となったのは中央3丁目のスペースく・ら・ら内の土音。micさんは一人芝居「ひとりコーラスライン(笑)!」で、一人何役にも挑戦。登場人物一人一人が抱える秘密が明らかになっていった。東日本大震災後、牡鹿半島でボランティア活動をしたのが縁で演劇祭に参加。コメディーで市民に元気を与えた。

 三國さんは、演劇祭に合わせて作品「咆哮(ほうこう) <私たちはもう泣かない>」を創作。男女3人のそれぞれの被災体験を通して、苦しみや悲しみを抱えながら再生に向かう姿を描いた。観客の中には自身の体験を重ねる人もいて、三國さんたちから生きる希望を受け取った。

 終演後、明らかになったのが「秘密」。三國さんは「3部作を予定しており、今回は真ん中の第2部をお届けした。震災を風化させてはならない。地元の演劇人として舞台から訴えていきたい」と力強く語った。

 3日も「R」の2本立てがある。渡波出身の小林四十さんが一人芝居「おだずなよ」で古里に初お目見えするほか、「咆哮」が再び上演される。

 続いて劇団「夢回帰船」出航プロジェクトが3、4日に登場。地元4劇団が合同で「和製南蛮船サンファンバウティスタとハセクラの秘密」を旧観慶丸商店(中央3丁目)で演じる。

 約1カ間、街中は芝居の面白い祝祭的な空間になる。連絡先は090(4041)8168。

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<演劇祭支えるコマイぬ、宮城拠点に決意新た>

 第1回から演劇祭を支えてきたのが「コマイぬ」の芝原弘さん(37)=石巻市出身=と菊池佳南さん(32)=岩沼市出身=だ。昨年、結婚した2人は今年6月、活動拠点を東京から宮城(仙台市)に移した。石巻で起きている芝居の面白い街づくりにこれまで以上に関わり、石巻地方の演劇人たちとも交流を深めていく決意だ。

 芝原さんは実行委員会副代表の傍ら今回、演劇祭に合わせて地元の4劇団が集結した劇団「夢回帰船」出航プロジェクトに参加。3、4日に旧観慶丸商店である劇「和製南蛮船サンファンバウティスタとハセクラの秘密」に出演する。

 芝原さんは「地元の演劇仲間や市民と一緒に、素晴らしい時間を共有できることを楽しみにしている」と話す。

 石巻西高を卒業してから約20年間、劇団「黒色綺譚カナリア派」に所属し東京で活動してきた。東日本大震災が古里を見つめ直すきっかけになった。2013年、個人ユニットのコマイぬを結成し、古里を芝居で活気づけてきた。その間に心境に変化が現れた。

 「活動を始めた時は、石巻の人たちに演劇に触れてほしかった。今は一緒に演劇を創りたいと思うようになった。活動の重心が東京から石巻に移った」

 菊池さんは、芝原さんの活動に共感してコマイぬに加わった。もともと平田オリザさん主宰の劇団「青年団」、演劇ユニットうさぎストライプの一員。演劇祭には第1回はコマイぬ、第2回はうさぎストライプとして参加。昨年は実行委員として動き回った。

 菊池さんは演劇祭について「石巻の観客と演者との間に流れるフレンドリーな雰囲気に引かれてきた。4回目を迎えることができて、すごくうれしい」と語る。

 2人とも「蔵や既存の建物を活用して、街中で演じるところに演劇祭の魅力がある。震災後に生まれた石巻独特の演劇文化だと思う。演劇祭を核に、演劇にあふれる街にするのが夢。仙台に拠点を移したことで、これからはもっともっと仲間たちと、石巻の演劇に関わっていきたい」と強調した。


2019年11月03日日曜日


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