ニュース回顧2019、取材手帳から<5> 第4回いしのまき演劇祭

施設の柱などをそのまま舞台空間に変えて上演する仙台の劇団鳥や。役者と客席が近いのも醍醐味=11月16日、旧観慶丸商店

 「石巻の人たちに大阪人の芝居を見てほしかった。これからも芝居で石巻を応援したい」。大阪のユニット「羊とドラコ」主宰の竜崎だいちさんは、いしのまき演劇祭に参加できたことを喜んだ。

 東日本大震災で被災した石巻を、芝居の面白い街にしようと3年前から始まった演劇祭。4回目となる今年は11月、地元や県内外から8団体が参加して約1カ月間、街中で繰り広げられた。初の共通テーマ「秘密」を設けたことも関心を呼んだ。

 実行委員会代表の矢口龍太さんは「それが隠し味になり、遊び心の加わった演劇祭になった。芝居の面白い街にまた一歩近づいた」と手応えをつかんだ。

 竜崎さんの心意気が示すように、演劇人たちの情熱が演劇祭をこれまで以上に熱くした。

 女優のmic(ミック)さんは震災直後、ボランティアで駆け付け牡鹿半島で浜の人たちを支援した。客席にはその時の浜の女性らがいた。上演終了後、ステージで再会を喜び合った。

 渡波出身の俳優・小林四十さんは古里での芝居は初めてだった。客席を見渡し「家族や親類、同級生だらけだ」と言って笑いを誘った。会場に温かいものが流れた。

 第2回から連続3回、参加した東京のfeblabo(フェブラボ)は「石巻に来ると力がもらえる」と感謝した。

 石巻で芝居する意義をそれぞれ胸に刻んで臨んだ。震災後の石巻だからこその演劇祭であることを改めて印象付けた。

 今年もまた、劇場での芝居とは違う面白さで市民を魅了した。旧観慶丸商店だったり、土音(スペースく・ら・ら内)だったり、既存施設の空間を利用。役者と観客の距離は近い。間近で見られる芝居の醍醐味(だいごみ)に触れた。ガラス張りの建物を生かした演出で観客を「あっ」と驚かせた仙台の劇団もあった。役者たち自ら“街中演劇祭”の可能性を探りながら楽しんだ。

 地元の三つの劇団が集結したり、地元の女優が劇団を発足させたりと、新たな動きもあった。芝居の題材も「震災」と共通。前向きに生きることを込めた内容に、石巻の演劇人たちの決意と覚悟が伝わってきた。

 初のプレイベントも好評だった。参加団体同士が交流を深める機会となった。開幕してからも互いに観劇し、刺激し合う光景が目に映った。石巻から新しい演劇コラボが生まれるような予感を抱かせた。

 全公演2000円均一だったが、入場料の設定方法には改善の余地がある。コアなファンだけでなく、一般市民をいかに広く巻き込むかも、演劇祭発展のために取り組まなければならない課題だ。来年は5回目。一つの節目を迎える。(久野義文)

※いしのまき演劇祭 https://i-engekisai.jimdofree.com/


2019年12月25日水曜日


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