東京五輪・パラ、石巻圏から[2] 石巻市スポーツ協会会長

石巻市総合運動公園に設置されていた聖火台の写真を感慨深げに見る伊藤さん=市スポーツ協会事務所

■石巻市スポーツ協会 会長・伊藤和男さん(72)=石巻市日和が丘=

<聖火リレー成功へ全力>

 2020年東京五輪聖火リレーのルートが昨年12月17日発表され、石巻市では6月20日に実施される。市総合運動公園に一時設置されていた1964年東京五輪の聖火台が、聖火リレーでは石巻市内のゴール地点になる。

 伊藤さんは「感慨深い」と特別な思いを抱き「スポーツ関係者を中心に声掛けし、みんなで迎えたい」とリレーの成功を思い描く。

 というのも、地元の官民による誘致委員会の事務局長として、聖火台の誘致を実現させたからだ。「被災者を元気づけたい」。熱意が関係団体の賛意を呼び、2014年12月から昨年5月まで貸与された。「64年東京五輪は戦後復興の象徴。今回は東日本大震災からの復興の象徴として火をともし続けたい」と誘致活動に取り組んだ。

 聖火台はスポーツイベントに合わせて20回以上点火された。「復興の火」や「鎮魂の火」。伝わるメッセージはさまざまだが、伊藤さんは「震災後、市民がスポーツへの関心を高めるシンボルになった。被災者が前向きに生きるきっかけになっただろう」と感謝の気持ちを込めて振り返る。

 石巻市出身。石巻高校時代から陸上競技に打ち込んだ。東北学院大陸上部の主将を務め、64年五輪の会場となった旧国立競技場で日本選手権の走り幅跳びに出場した。20代半ばで現役を引退し、子どもたちの指導を続けた。2003年に市スポーツ協会前身の市体育協会会長に就いた。

 震災では友人や知人が津波の犠牲になった。経営するコンビニエンスストアも被害を免れなかった。「水も食料もない極限状態。スポーツどころではなかった」。一度は熱意を失いかけたが、震災翌月から協会職員ら9人で避難所で健康維持のための体操指導を始めた。

 15年6月、聖火台の点火式。「雨の中で点火され、歓声が上がった。誘致して良かった」

 同時に目指した聖火リレー出発地の誘致は福島に譲る形となったが、聖火台によって地域の五輪機運は確実に高まった。「震災で命の尊さを知った私たちだからこそ、スポーツを通じた平和の尊さを発信できる。石巻から夏の祭典を盛り上げたい」と力を込める。

 聖火リレー当日。「総合運動公園で市民と共に走者を迎え、五輪の足音が感じられる瞬間の感動を共有したい」。伊藤さんは被災地が活気づくその日を心待ちにしている。


2020年01月03日金曜日


先頭に戻る